ぽかんと此方を見た国木田さん。やがて、光る眼鏡をくいっと上げた。
お化け屋敷だけはNGなのです!!!
絶対行かねぇえええええ!!!!
すっかり忘れていた。
て言うか、仕事外なら佳いのね…?
怒られそうなので、様子を伺う。
そっとくにっきーを見上げると、彼は、顔を逸らして
と聞いた。
怒鳴られるかな。
と言うよりも、ツッコミを期待して。
でも、帰ってきたのは「そうか。」だなンて短い言葉。
無言で怒れるとめっさ怖いんだけど…
目も合わせてくれない。如何したのかな。
そっと覗き込んでみる。
何か知らんが怒られた。
…否、鈍感な振りは止めよう。
なんとなぁく。
拳骨が降ってきました…
つまりは図星ッて事じゃないですか!!
そっと、尋ねる。
あれ、おかしいな。なんだか…国木田さんが、可愛い。
小さく背伸びして、少し高い其の耳元へ。
国木田さんの肩がビクリと震えた。
よく考えたら…距離が、ちかい。
国木田さんの赤い頬につられて、私も…顔が熱い、気がする。
──…ちゅ、と。
軽い音がした。
──────アレ?
今、私…
急いで携帯電話を掛ける。
唐変木に、「発見しました!」と言えば、
後はよろしくだなんて。
やる気ねぇな此奴!?
▼▼▼
陽は傾いて、鴉が鳴いている。
其れを皮切りに、静かな沈黙が落ちる。
さっきのは一体、何だったンですか…?
其れを訊く勇気は、私には、ない。
手だ!!其う言って、乱暴に手を突き出される。
うーん…国木田さんがデレてる…あとが怖い。
でも。
後先考えないのが、私なんだから。
今は素直に、その手を取った。
二つならんだ影をじっと見つめる。
瞬きしないで、10秒。
いつもと違う一日の思い出を、そっと、空に。
流石に無理があったぜ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。