第68話

【53】
12,257
2018/05/11 06:26
あなた

…其れは、孤独です。

この世で一人ぽっちになる事が、一番辛くて、恐ろしい。

そう、付け加える。

言葉を考えてる余裕などなかった。
ただただ溢れて、止まらない。
あなた

どんなに人に嫌われても、
どんなに世界中から厭われても、
どんなにこの世から仲間外れにされても

嫌な顔をされても、
死ねと言われても、
いない方がいいと言われても。
あなた

独りじゃなければ、其れは只の不運であり、不幸じゃない。

私を見る少年の瞳は、真っ直ぐに濁っていた。まるで、かつての私のように。

其れがただ苦しくて、見ていられなくて。
あなた

一人でも「大丈夫だよ。僕は君の味方だよ。」ッて言ってくれる人が居たら、どんな事でも乗り越えられるンです。

だから。
あなた

本当の不幸な人は、本当にこの世から隔絶された独りぼっちの人なんです。

夢野久作
夢野久作
…其れなら、僕は不幸だよ。だって、ずっと一人だもの。誰も僕を好いてなんてくれない。
あなた

…悲しいですよね。

夢野久作
夢野久作
悲しいよ。つらい。…苦しいよ。
あなた

でも…今は、其れ以上に憎いんですね。

夢野久作
夢野久作
そうだよ!憎い、恨めしいよ…!何で僕だけが、何で、何で何で何で!!神様はいないの!?
あなた

神様なんていません。

イエス・キリストだって、
仏様だって、

あれは人が心の拠り所の為に作り上げた“神様”という概念。

それ以上でもそれ以下でもありません、と答える。
夢野久作
夢野久作
…僕は…ずっと、独り。僕は不幸。不幸なの。
あなた

いえ、貴方は不幸じゃない。

夢野久作
夢野久作
其れはお姉さんは知らないからだよ!皆が僕を嫌って、いなくなれって思ってる!
あなた

思っていません!少なくとも、私は!

夢野久作
夢野久作
…え?
あなた

私は貴方とお友達になりたい。貴方は一人じゃありません。私がいます…!

必死に言葉を紡ぐ。
お願い、お願いだから、諦めないで。

貴方は、諦めないで。
あなた

だから、自分の不運を人の所為にするのはやめましょう…?体当りして、ぶっ飛ばしましょう!

一緒に進みましょう、
私も貴方も一人じゃないんだから!!!
あなた

生きることは息をすることです。心臓を動かすことです。そして…信じることです。

めいっぱい、彼を抱き締める。
異能の発動条件なんてどうでもいい。

彼は一体、その小さな身体にどんなに大きいものを背負っているンだと言うんだろう…!!
あなた

生きることを、やめないで。信じて下さい、未来の貴方の周りで咲く笑顔を…

出来れば、その中に私も入っていたい。

そう伝えると、彼は小さな雫を落とした。
夢野久作
夢野久作
…お姉さんは、僕のお友達?
あなた

はい。お友達です。何なら彼女とか妻でもいいですけど!

夢野久作
夢野久作
かのじょ…?
あなた

ふぁあぁあエンジェル…っ、

夢野久作
夢野久作
…変なお姉さん
くすくす、と少年は笑う。

その笑顔は、今までのどの笑顔よりも
─────年相応な感じがした。

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