それはそれは良く晴れた日だった
透きとうる青空
小鳥が天空をひゅるりひゅるりと舞っていた
俺は何処から来たのか、ここが何処か、そんなのは知らず木の根元で空を見上げていた
日に照らされたところが影になる
清んだ声
1人の女のが心配そうな顔で見ていた
これがミツバ姉と俺が初めて会った日だった
木の上で寝ていた
行く宛てもなく
ただ、
日が登り、日が暮れ
星がチカチカと輝き、月明かりが照らす
ただただ、
時間の流れるままに空を眺めていた
あの日以来、ミツバ姉は時間が許す限り俺の所に来た
初めは無視していた
すぐ離れるだろうと、、、
けど
何度も
何度も何度も
何度も何度も何度も俺の傍に来た
木から降りてミツバ姉の所まで歩み寄る
そしてミツバ姉の手のひらいっぱいに果実をのせた
言葉は出さなかった
交わさなくても、伝わった
“大丈夫だから”
満面の笑みで喜んでいた
初めて、
誰かの傍に行った
初めて、
人と何かした
初めて、
温かいモノに触れた気がした
――――――――――
それからしばらく日が過ぎた
初めて言葉を交わした
優しく名前を呼んでくれた
その日以来、
ミツバ姉が色々な話をしてくれた
総ちゃんと呼んでいる弟がいること
近藤さんが気前がいいこと
十四郎さんと呼んでいる人が近藤さんに連れてこられて一緒に剣術を学んでいること
辛いものが好きなこと
ミツバ姉がその日にあったことなどたくさん話してくれた
それを聞いているのは嫌ではなかった
この話を聞くまでは
寂しそうな笑み
それを見て恨んだ
いつもみたいに
楽しそうに
笑ってほしかった
江戸へと出ていった
見送るその背中はとても小さかった
ミツバ姉の寂しさを埋めるため
ミツバ姉の笑顔を守るため
ミツバ姉の看病をしたり
ご飯を一緒に作ったり
2人で時を過ごした
本当の意味で家族になったのは
山賊に村の一部が襲われた時からだった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!