小さな声でささやいたあと、冬獅郎はキスをした。
しかし、眠りが浅かったのか、獅子頭はすぐに目を覚ました。
起きた獅子頭を見て、冬獅郎は口をすぐに離した。
獅子頭は顔を真っ赤に染め、口に手を当てていた。
少し声を荒らげて言った獅子頭を見て、冬獅郎はまたキスをした。
獅子頭は腕に力が入らず、抵抗できなかった。
そろそろ息が苦しくなってきたところで、冬獅郎はキスをやめた。
獅子頭は頭がぼーっとしてた上に眠気に襲われ、意識がもうろうとしていた。
そんな様子を見て、冬獅郎は獅子頭の体を横に倒し、彼の頭をなでた。
冬獅郎はそれだけ言い、立ち上がって自分の部屋へ入っていった。
獅子頭は冬獅郎の服の端をつかもうと腕をのばした。
それでも、睡魔に負けて眠ってしまった。
獅子頭が起きた時には、もう外は薄暗くなっていた。
獅子頭は自分の後ろからした冬獅郎の声に、いつも以上に驚いた。
それに、目も合わせられなかった。
顔を見れない獅子頭に比べ、冬獅郎はずっと獅子頭を見ていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!