バイキングの時間は、あっという間だった。
時計を見ると、午後の2時を回っていた。早いとは思ったけど、服買って移動した時間足したら、このくらいなのだろう。
でも、園内に昼食を食べられる店があるかどうか・・・。
俺が周りをきょろきょろと見回す中、冬獅郎はマップで店を調べていて、もう見つけてすらいた。
すぐに言葉は出てこないで、詰まった声が出てきた。自分がいかにアホなのかが、改めてわかった気がする・・・。
ラーメン屋は、数分歩けば着く距離にあった。道中腹が唸りだし、多少イライラし始めていた。
冬獅郎を先頭に、俺たちは店に入った。
コンビニくらいの大きさで、小上りとテーブル席とあった。人はそこまでいなかったから、近くの2人用のテーブル席に座った。
失礼しますとお辞儀をし、店員はテーブルから離れていった。
目の前に座る冬獅郎は2人分の水をコップに注ぎ、俺に一つを渡してきた。喉も乾いていた俺は、その水を一気に飲んだ。
持っていたコップを置くと、中に入った氷が、カランと音を立てた。
冬獅郎は椅子にかかったバッグから本を2冊取り出し、その内の1冊を渡してきた。
口角を少し上げ、笑ってこっちを見てくる視線がとさっきの台詞が、俺に熱を持たせた。
とりあえず礼を言って、手の中の本を開いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!