前の話
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あれは、中学校の卒業式が終わったあとだった。
私…夢莉と幼なじみの優也は、家が近いため、いつものように一緒に歩いて帰った。
優也は小学校の時から野球一筋で、中学でもエースとして活躍した。
いつもクラスの中心にいて、人気者だった。
私は、吹奏楽部に入って、野球応援に行ったて優也の活躍を見た。
練習試合何度も見に行った。
優也は私の自慢の幼なじみ。
高校は強豪校からたくさんの推薦がきた。
でも、優也は私と同じ高校に進んだ。
理由は聞かなかった。
…けど、今日、このこの気持ちを伝えて、優也の気持ちも知れば分かる気がする。
…優也の事が好きだと。
伝えれば。
たくさんの試合を見ているうちに、私はいつの間にか優也の事が好きになっていた。
優也と私の距離は近かった。だから、今まで伝えられないでいた。
でも、高校に行く前に伝えなきゃ絶対に後悔すると思う。
暗くなった、いつもの道を優也といつものように帰っている。
高校に行っても、一緒に帰れるかな。
そんな呑気な事を考えながら、優也の方をちらっと見た。
優也は、真っ直ぐ前を見ていた。
身長差は、20cmくらい。
私の身長が低いため、結構な差がついている。
身長の事で、何回優也に弄られたことか…
…そんなことを考えてるうちに、私達の家が見えてきた。
ぽろっと出た言葉。
笑いながら言う優也。
きっと、優也は私の気持ちに気づいているだろう。
…だからこそ今日伝えなきゃいけない。
私の気持ちを。
私の言葉を遮って、優也は言った。
笑顔で。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!