降ってくる雨は、やむ気配を見せなかった。
このままずっと、降り続けそうなくらいの勢いだった。
鈴からのメッセージを無視してから、恐らく30分ほど経っただろうか。
授業終了のチャイムが聞こえた。いつも無駄に大きなチャイムも、雨の音にはかなわない。
目を閉じ、雨の音を聞きながら、暗闇の中へ入った。
夢かな・・・誰かの声が聞こえ──あれ?この声・・・。
目を開けると、そこには青い顔をした鈴がいた。
髪も制服もびしょびしょで、息はあがっていた。
鈴は私のことを抱きしめてきた。抱きしめてきた体は冷えて、その上震えていた。あれ、もしかして──
抱きしめられていた腕はゆるみ、ばたっと音をたて、大きな体は倒れた。
鈴は目を閉じていて、体は少し熱を帯びていた。もしかして──風邪!?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!