鈴は何も言わないで、ただ目を丸くしていた。
やっぱ知らなかったか・・・。
すると、鈴は勢いよく立ち上がった。
俺が待てと言う時には、既に鈴は教室を飛び出していった。
登校してくる生徒が、みんな俺を見てくる。そりゃそうだよね。もうすぐチャイムが鳴るのに、学校から出てきてるんだから。
校門を出たところで、あなたちゃんに電話をかけた。
あなたちゃんの驚く声が聞こえたけど、俺は半ば強引に通話を終了した。
誠は、今日の朝あなたちゃんのお母さんに会って、休みなのを知った。なら、誠の家に行く途中にあるはず。
いきなり電話がかかってきて、返事も聞かずに切られた・・・。
色んな疑問が、頭の中を飛び交っていく。
スマホの画面が暗くなると、次は誠から電話がかかってきた。
久しく聞いてなかった声が、大きく響く。私は思わず、スマホを耳から離してしまった。
誠にも切られた・・・。
今の一瞬で、結構心が疲れた気がした。
私が立ち上がり2階に繋がる階段に足を置くと、インターホンが鳴った。
無視する訳にもいかず、恐る恐るドアを開けた。すると、聞き覚えのある声が、私の名前を呼んだ。
鈴は、息が上がっていて辛そうなのに、満面の笑みで私を見ていた。
心のどこかで、鈴に会えたことを喜んでる自分がいた。その一方で、今は一番会いたくなかったと思う。
これ以上鈴をここに居させないために、開けたドアノブに手を伸ばし引っ張った。
私に会えたからって、嬉しいのは今だけだ。授業に出ないと、未来が悪くなる可能性だってある。
そんなの、頭のいいコイツならわかってるはずだ。なのに、それでも私に会いに来た・・・。
引いていたドアが、動くのを止めた。鈴がドアを抑えてきたからだ。
今まで以上に、低くてよく通る声が響く。
下を向いた視線を少し上げると、まっすぐ私を見ている鈴の目が見えた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。