確かに、今は誰かに助けてほしいと思う。
この孤独になった世界から。味方のいない、不利な状況から。
もう、誰かではないか──鈴に、助けてほしいんだ。
いつも鈴だけ、私のことわかってる。その反面、私は鈴のことを何も知らない・・・。
この短期間で、鈴のことをやっと好きになった気がする。
前までは嫌だったのに、今はそばにいてほしいくらいだ。色々とありすぎたのも、あると思うんだけど。
鈴が黙っている私の顔をのぞいてきた。整った顔が、私と同じ高さにまで下りてきた。
もぅいっそ、認めてしまおうか。
素直になっても、いいのだろうか。
わがままが今許されるなら、神様──私は鈴が好きです。
下に向けてた視線を上げて、鈴の顔を見た。
いつもへらへら笑っているイケメンは、今は目を丸くして、不思議そうに私を見ていた。
初めて口に出して、心がなんかすっきりした。もやもやが消えて、気持ちのいい風が吹くようだった。
いつも好き好き言ってくるのに、なぜコイツは驚いているのだろうか・・・。でも、今は可愛いなんて思ってしまう。
しっかり鈴の目を見て、笑って言った。
恥ずかしさで、顔が赤くなるような感じにはならなかった。ただ、すっきりした感覚だ。
はっきりと告白された鈴は、少しの間、口を開けて何も言わなかった。
私はドアを閉め、部屋に行き制服に着替えた。バッグを整理し、階段をおりながらお母さんに連絡をした。
心配性なお母さんにはずっと聞いてきたけど、私はとりあえず説得し、学校へ急いだ。
教室に入り席に着くと、丁度授業開始のチャイムが鳴った。目の前にいる親友は、振り返りもしないで、俺の足を蹴った。
廊下側の席にいる田中が音読し始め、俺は誠に声をかけた。
声では応えなかったけど、そのかわり、紙きれがわたされた。
『あった?じゃねぇわボケ!いない理由誤魔化すの大変だったんだそ!?』
背中しか見えないけど、ちょっと力んでる感じが、怒ってるのを伝えてきた。ごめんなさい・・・。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!