第24話
ハッピーバースデー
バッグからスマホを取り出したけど、誰からも連絡は来ていなかった。
1年生が移動教室なのか、廊下からは明るい声と、たくさんの足音が聞こえる。時計を見ると、あと5分程でチャイムが鳴る時間だった。
そのうち廊下からは声がしなくなり、再び静かな空間が戻ってきた。でも、それは数分で消えた。
廊下に誰かの足音が響き始め、それはこちらに向かっていた。
誰だろうなんて思って保健室のドアを開けると、ドアの向こうにいた誰かにぶつかった。
反射的に謝り、頭を下げた。でも、私がぶつかったその人は笑っていた。
笑い声は、とても聞き覚えのある声だった。
声に反応して顔を上げるも笑われ、恥ずかしさで顔は熱を持ち始めた。
驚きの連続で、体は固まったまま動かなかった。
彼の笑い声が、保健室に響く──さっきまで落ち込んでたのが嘘みたいに、今は気分がすっきりしていた。
まだ怖い──なんて、鈴には言いたくなかった。何しでかすかわからないし。
代わりの言葉を探す内に、先生が戻ってきた。
納得いかないような表情をする鈴だったけど、素直に保険室を出ていった。
保健室の戸が閉まり、チャイムが鳴った。
私がそばの椅子に座ると、スマホに一件メッセージが送られてきた。チャイムが鳴っても送ってくる人間は、大体予想つくけど。
鈴が言うと妙に説得力があるような・・・。
私はただ、ありがとうとだけ送っておいた。
授業は今さっき始まったばかりのようで、まだ誰も教科書も開いておらず、ペンすら持っていなかった。
俺は教科書とノートを開き、授業をうけた。