第27話
犯人
再び階段をおり、リビングルームに戻った。いつもなら家を出ているけど、今日は少し時間がある。
昨日とは全く違う私の表情に、お母さんは驚いたようだ。げっそりしていた次の日は、朝から笑っているなんて、あまりないだろう。
お母さんが家事に戻り時間を一応確認すると、インターホンの音が家に響いた。
お母さんは台所からだけど、笑って見送ってくれた。
ドアを開けると、そこには寝癖が少しついた、アイツが立っていた。
苦笑いを浮かべる彼は、ちょっと恥ずかしそうだった。そういう顔も、悪くない。
私は鈴の横を通り、先に道へ出た。その後を、彼は子供のような笑顔で追ってきた。
校舎が見えてくると、見たことのある顔が増えてきた。正直、まだ怖い。
周りの視線が気になって少し下を向いて歩くと、横から鈴が話しかけてきた。
コイツの一言だけで、不安も恐怖も和らいだ。私は一度深呼吸をし、再び足を動かした。
下駄箱まで行くと、流石に女子に声をかけられた。
いつもなら、何かしら言える。でも、否定も出来ないし、肯定する勇気もない。私はそのまま固まっていた。
何も言わない。そのうち飽きて、勝手にいなくなると思ったし。なのに、彼女達はいなくならなかった。
イラついたのか、数人の女子のボス的な女子が、私の肩を押してきた。私は突然のことで、バランスを崩した。しかし、体は何かに受け止められた。
顔を上げると、綺麗に整った顔があった。私には笑顔を向けて、どういたしまして、と言ってきた。
鈴は私の体のバランスを戻すと、私を押した彼女たちの方を向いた。
鈴の視線は鋭く、声も低かった。睨まれた彼女たちは足を一歩、後ろに下げた。
思わず声が出て、鈴の顔を見てしまった。
彼女たちは少し動揺してた。それでも、証拠がないと、誰がやったかなんて断言できない。なのに、鈴の目に焦りは見えなかった。