鈴に助けてもらったお陰で、少し心がすっきりした。まぁ、話がハイスピードすぎて付いていけなかったんだけど・・・。
こうして、私は教室まで送り届けられた。
席に着き荷物整理をした後、画眉の山を職員室に持っていった。先生方には少し心配されたけど、これ以上大きくしたくなかったから、大丈夫ですとだけ言った。
職員室を出て、教室へ戻った。ただ、周りからの視線とかが刺さってくるから、ちょっと怖い。噂の速度って恐ろしい・・・。
今日はとりあえず、事件は起きなかった。授業も一応ついていけたし、問題点は周囲の視線のみ。
私は考え事をやめ、持っていたホウキをしまい、掃除を終了した。
教室を出ると、後ろから声をかけられた。誰かは一瞬でわかるけど。
一緒に帰りたいから部活を休むのは、どうなんだろう・・・。ダメだよね。
内心ちょっと嫌だったけど、流石にエース無しはダメだろう。私は鈴をおいて、早足で生徒玄関へ向かった。後ろからがっかりした声が聞こえたけど、今は無視だ。
階段を素早くおり、踊り場は手すりを使って回る。誰も歩いていないから、ちょっと開放感がある。
一階へ着くと、目の前には大量の下駄箱。またしても、ここに人はいなかった。ラッキー!
この前までは真理が近くにいたし、最近はずっと鈴が隣にいる。一人になるのは久しぶりかもしれない。
私は靴を履き替え、校舎を出た。
誰かが後ろから、私の名前を読んできた。確信できるのは、鈴ではないこと。
少し警戒しながらも振り向くと、そこには誠がいた。
久しぶりと言っても、つい先日電話来たけどね。まぁ一瞬のことだったし、久しぶりなんだろう。
面と向かって話すのは、やっぱり少し緊張する。
誠は数メートル先から距離を縮めてきて、一緒に帰ろうと言ってきた。一人も寂しいし、久しぶりに話もしたかったから、彼の隣を歩いた。
誠は目を丸くしながらも、裏のない笑顔で言った。自分で言ってなんだけど、恥ずかしい・・・。
こっちはちゃんと言ったし、そちらも話しても良かろう。ちょっと面白半分で言ってみたけど、誠は顔を赤くして目線を逸らした。真面目な反応に、私もちょっと調子が狂う。
誠はうーんと言ったあと、口を開いた。
顔はちょっと赤いし、目も合わせてこない。女々しいなぁ、反応が。
こうして、誠を少しからかいながらも家へ帰った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。