それからは、平和な日常生活へ戻っていった。
イタズラも無いし、女子に絡まれることも無くなった。鈴もキャーキャー言われなくなって、本人も楽になったって言ってた。
同じクラスに、女友達ができた。なんか、新しい自分になった気がする。全てはアイツのおかげだ。
今日は、今年最後の日。あと数十分で、色々あったこの年も、終わりを迎えようとしている。
2年生で構成されたメールのグループは、なんか炎上している。時々メッセージを打つけど、なんか見てる方が楽しい。
見てるだけで、自然と和むなぁ。友達とかって、大切なものなんだな。
23:00くらいから、ずっと通知音が鳴り止まない。それにも驚くけど、もっと驚いたのは、トークにアイツが参加していないこと。誠でさえ、何かしらの反応は見せている。なのに、アイツは現れる気配すらない。
私はトークの通知をオフにして、外の空気を吸いに窓を開けた。
冷たい風が、ゆっくりと部屋の中へ入ってくる。私の部屋の位置的に家の前の道が見えるけど、誰も通っていなかった。周りの家も、電気はあまりついていない。
アイツは寝たのだろうか。なんとなく、憧れの0:00に『あけまして、おめでとう』とか欲しいな、なんて思ってしまった。
空を見上げると、今まで見たことがないくらい、星が綺麗に輝いていた。私は思わず、スマホで綺麗な星空を撮った。
私は今の写真をアイツへ送り、スマホの電源を切った。
時計を見ると、年明けまであと1分も無く、秒針は数字の6を過ぎていた。
カウントダウンを口にしながら、秒針から目を離す。体内時計には自信があるし。
数字が小さくなっていく。私は夜空を見上げ、遠くにある月を見た。どこも欠けているところはなくて、まん丸だった。
ゼロと言おうとすると、そばにあったスマホが二度鳴った。グループの通知は切っている。多分みんな、そっちで新年の挨拶をしているだろう。
送ってくる宛が思いつかず、私らスマホを手に取り、電源を入れた。
新年の挨拶に加え、一枚の写真が送られていた。
写真には、人が一人写っていた。その人物は窓から顔を出し、空を見上げていた。その顔は、私がうんざりするほど見ている顔──自分だった。
私は再び、窓から顔を出した。今度は上を見ないで、下を見た。道路には、一人の人物がいた。
その人物は白い息を吐きながらも、笑顔で私に手を振っていた。その姿を見て、自然と笑顔になってしまった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。