その後もクラスマッチは盛り上がったけど、私の気分は落ち込んだまんま。
ほんとにあの二人、ずーっと一緒にいるの。
クラスメートが点を決めたら、二人でハイタッチ。
何か面白いものを見つけたとなるとこそっと耳打ち。
ホントに恋人みたい。
いや、マジで付き合ってるのかもしれない。
でも他のみんなは気にしてないみたい。
あの二人に興味が無いからなのか、付き合ってるようには見えないのかは分からないけど。
私は…優人のことが好きだから、どうしてもそういうふうに考えちゃうよ。
ただの片想いなのに、不安になっちゃうの。
もし私が優人と付き合ってたんだとしたら、嫉妬するのは普通のことだと思う。
でも、ただの片想い。
私が一方的に好きなだけ。
そんなので嫉妬して、何様のつもりよ。
あーぁ、早く終わんないかな、この時間。
「そろそろ帰るー?」
スマホで時間を確かめると、もう4時だった。
「そーだね、全滅しちゃったしね〜」
男子バレーも結局負けて、ほかの競技でも勝ち進んでるチームは無し。
3人で歩きながら教室に戻る。
「この後どーする?
プリでも撮ってく?」
「それいいねぇー!
レッツゴーっ!!!!」
「なにあなた!
急にテンション高くない!?」
…もう、今日はあの二人のこと、考えるのやめた!
今クヨクヨしてたって仕方ないよね!
千星と桃海と寄り道して楽しむもんっ!
「っ…」
…考えないようにって思ってたばっかなのに。
教室に戻ると優人が帰りの準備をしていた。
他にも数人、話したり、帰るとこだったり、寝てる人までいる。
「ちょっとトイレ行ってくるね〜」
「あ、私もっ」
千星と桃海はそう言って一旦教室を出ていく。
…やっぱり、優人に声掛けたいな…。
さっき由望といるところ見て気分下がってたのに、話しかけたいって思っちゃうなんて…。
まだ優人のこと、好きな証拠。
でも、どうやって話しかける?
「あなたー!
おっつかれーい」
「あ、のどか!
おつかれ〜」
藤原のどか(ふじわらのどか)、中学は違うけど帰る方向が途中まで一緒で時間が合えば一緒に帰ってる。
「これあげるーっ」
のどかは私にクッキーを手渡した。
「え、ありがとう!
この袋…もしかして、手作り?」
百均とかに売ってる可愛いイラスト入りの袋の口をモールで止めてある。
「そーっ!
昨日お母さんと作ったんだーっ、今日配ろうと思って」
女の子だなぁー…。
「もしかして、コレ?」
私は親指を立ててのどかに見せる。
「いやいや、私彼氏いないよ〜っ!」
「じゃあ好きな人に?」
「…んまぁ、そんなとこかなぁ…」
のどか、耳まで真っ赤。
可愛いヤツめ!
「きゃぁ〜やるぅ〜」
ツンツンっとのどかの肩を指でつつく。
「もー、しーっ!!!」
周りを気にしながら人差し指を口に当てて私を黙らせようと必死。
ホント反応が可愛い。
こーゆー子がモテるんだろうなぁ…。
あっ…。
優人がリュックを背負ってこっちへ。
こっちって、私がドアの近くの席だからそう感じるだけだけど…。
「あ、優人おつかれっ。」
私の後ろを通り過ぎようとした優人にのどかが言う。
「んあぁ、おつかれー。」
優人も返す。
あっ、今なら!
「おっ、おつかれ〜…」
私も便乗して言ってみたけど…そのまま優人は教室を出てってしまった。
私の声も小さかったし、聞こえてなかったかな…。
はぁ…。
先に声掛けてれば、返してくれたかな…?
この、意気地無し!!
「そだ、あなた、帰りどーする?」
「あぁ、千星と桃海とプリクラ撮って帰ろーって話してたんだよね〜…」
「そっか!
私も夏帆(なつほ)とそうしようと思ってたとこだったから…じゃぁ帰りは別ということで!」
「はーいっ。
お、ちょうど戻ってきたじゃんっ。
じゃぁね、のどか!」
「うんっ、バイバーイ」
お互いに手を振って、千星と桃海と教室を出る。
「ねぇ、ついでにクレープ食べてかない?」
下駄箱で靴を履き替えたところで桃海が提案した。
「いいねっ!
あそこのショッピングモール、フードコートに確か入ってたよね?」
校門を出て、ショッピングモールに向かう。
「そーなのっ!
この前食べたら美味しくって…
今日は頑張ったから、ご褒美に!」
「そんなに頑張ったかー?
所詮、一回戦敗退だよー?」
「そーゆー事言わない〜!
いーのいーの、頑張ったって口実があれば!」
「あなたはとりあえず食べたいだけか…」
「まぁ、そゆことーっ!」
私も1回行ってみたかったんだよね、あのクレープ屋さん。
「あーぁ、そーゆーとこに彼氏と行ってみたいなぁー!」
「千星、スグにできそうじゃん!」
「いやぁ、まず好きな人がいないよー」
「同じ部活の人とかは?」
千星はバスケ部のマネージャー。
「うーん…」
「例えばー…快斗とか」
「んー、なんか違う…」
「じゃあ、潤くん」
「いや、由望と別れたばっかだし、ナイかな。」
「んじゃ…」
この辺で優人を入れとかないと…無駄に避けてるってバレちゃう。
「優人は?」
「なんか合わなくない??
優人ってなんか凄いじゃん…」
「んまぁ、確かに…格が違うって感じするよね」
「そうそれ!」
自分で言って、自分にも当てはまるなって思って今落ち込んだ。
優人って、頭がキレてて言ってることが的確なんだよね。
話をするのも得意みたいで、英語のプレゼンとかの授業ではすごい面白いし。
とにかく、すごい人だよ。
そんな人と私、付き合っても絶対似合わない。
あーぁ、また出ちゃった、ネガティブ思考。
まぁ、事実だよ、事実。
はぁ…。
最近ため息ばっかだなー…。
これじゃ幸せも逃げちゃう。
とりあえず、クレープ食べて幸せに満たされよーっと!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。