第19話

楽しみな事
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2017/12/01 03:49
「あなたーっ、新曲どー?」


部室でギターの手入れをしていたところ、美織がドラムスティックでリズムを刻みながら言った。


「あー、それがねぇ…一応出来て入るんだけど、もう少し手直ししたいっていうか…。」


「そっかそっか。

今回のテーマは…『片想い』だっけ?」


「うんっ、前回失恋ソング作ったから、片想い、いいかなーと思って。」


「なに、最近恋愛系じゃーんっ、恋でもしたー?」


にやっと笑みを浮かべる美織。


「違うよーっ。

なんとなくそーゆーの書きたい気分なのーっ。」


私たちのバンドは自ら作詞作曲して、オリジナルソングをいろんな所で披露してる。


文化祭とか、地域のイベントとか。


私は作詞担当、作曲は美織。


時々交代する時もあるけど。


1年の最初はオリジナルじゃなかった。


だけど私が夏休みに部室でなんとなーく思い付きで口ずさみながらギター弾いてたら、みんなに「何その曲!?」って言われて…


割と好評だった、私の初歌詞。


それから自分たちで作るのいいねってなって、今では当たり前のように沢山作ってきた。


最初は作曲もやってたんだけど、あるとき美織がやってみたいって言ったから、任せたらそれがまた良くて…。


そして、今のポジションに落ち着いた。


割と4人の中で役割分担が決まってて。


仁菜はどのイベントに出演するとか、交渉とか、そういうものを一切任せっぱなし。


亜莉沙は主に部費の管理。


今月はスタジオ借りるお金があるとかアンプ買えるとか…やっぱりしっかり者だからね。


「んまぁ、とりあえず、アメリカ行く前には仕上げてね?

あなたがいない間に曲付けとくから。」


「あ。」


やば、すっかり忘れてた…!


「そっかぁ、私、来週アメリカ行くんだった!!」


一週間ホームステイプログラムに応募したら通ったんだよね〜…。


「忘れてたの?

呑気だなぁ。

行くのは金曜だよね?

まだあと10日くらいあるから大丈夫でしょー。」


「うん、なんとか頑張るね。

って、休んでる間授業やばいっ!

数学とか…戻ってきたら絶対何にもわかんない…。」


一気に不安になってきた…。


「大丈夫、大丈夫。

あなたならなんとかなる!」


「何を根拠に…。」


「あ、お土産待ってるねーっ」


「話変わるの早っ…。」


もぉー、美織ってば、適当なんだからっ!


「おーつかれっ!」


ガチャッとドアを開けて亜莉沙と仁菜が入って来た。


「おつかれーっ、どこ行ってたの?」


「あぁ、ハロウィンパーティが駅前の広場であるらしいんだよね。

そこでステージ発表の場があるから出てみないかって、さとちゃんが。」


「そっか、今月末にはハロウィンか。

さとちゃんから言ってきたの、珍しーねっ。」


さとちゃん、っていうのは顧問の先生。


里見真奈(さとみまな)先生、音楽家の先生で若いから話しやすい。


「今回は吹部も出るんだってー。

だから先生同士でそーゆー話があったらしいよ。」


「なるほどね。」


うわぁ、こりゃ楽しみな事いっぱいだぁ!!

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