「よしっ、これで全員合計点出たね!」
水曜日の4時間目、全教科のテスト返しが終わった。
お昼休みにいつもの4人で報告会。
「行くよー?」
せーのっ、という掛け声とともに、合計点を書いた紙を見せ合う。
「お、いっちばーん!」
今回のテストは私が一番いい点数だった。
「うげ、奢りじゃんーっ!」
「ごちそうさまでーすっ」
美織がへなへなと倒れる。
「おーい、今日放課後席替えすっから残ってけよー」
学級長の鳴海航(なるみこう)が言う。
やった!
席替え〜っ。
「良かったじゃん、あなたすっごい楽しみにしてたもんね〜」
苦笑いで言う亜莉沙。
えへへっ。
期待するは優人の隣!
あ、いや、近く!
いつも見てるテレビの占い、今日は3位だったからそこそこいい席になるはず!
…確証はないけど。
「よし、全員引き終わった。
夏帆、書けたー?」
夏帆は副学級長。
毎回座席表を書く。
「おっけい!
グルチャにあげるね〜。」
みんながLINEを開く。
私の席は〜っ…。
「うそんっ!?」
私は座席表を見て驚愕。
「どしたの、あなた」
美織が聞く。
「え、も、え…ま、マジかぁ…」
言葉にすらなってない。
私は机に突っ伏した。
「んー?
っわひゃひゃひゃっ!!!」
「笑い方!」
私の座席を確認したであろう美織が盛大に笑う。
「だってあなた、あんなに席替え楽しみにしてたのに〜…」
「あーれー?
あなた席変わらないんじゃーんっ!」
そう横から突っ込んできたのは仁菜。
「うぅぅ…」
そう、私の席はこのままここ。
教室の後ろから2番目、一番廊下側の席。
新鮮な景色を見たかったのに…。
「まぁまぁ、ドンマイっ」
はぁぁぁ。
「てか、みんな近いじゃんっ!」
移動し終えたあと、みんなで一旦席についてみた。
私の2個前が美織、左斜め前が亜莉沙、左斜め後ろが仁菜。
「ジグザグだね〜」
近くて話しやすい、まぁ周りのメンバー的には良い。
ちなみに…優人の席は…
亜莉沙の前っ。
前より距離は近い。
けど、ビミョー!
「あーぁ、変わりたかったなぁ…」
「じゃ、交換するー?」
「へっ、」
亜莉沙が言った言葉に驚く。
席交換!?
って、優人の真後ろじゃないですか!!
「え、いいの…?」
「んー、どーだろ?
あたし的にはいいけど、もう書いちゃったしねぇ…。」
「そっかぁ、じゃあ、うん、大丈夫。
ありがとねっ」
一瞬上げられた私のテンションはまた通常に戻る。
んー、3位ってこういう事なのかぁ…。
近いけど、遠い。
なんとも中途半端な。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!