「んじゃ、行ってきます!!!」
私はビシッと敬礼した。
「よし、行ってこぉぉぉい!」
美織も真似る。
「お土産よろしくっ」
亜莉沙はぐっと親指を立てて突き出す。
「ワンチャンあなた帰ってこなくても、お土産あれば…」
仁菜も亜莉沙と同じようにグットポーズ。
「っておーいっ!!」
私は明日からアメリカに旅たちます!
とは言っても、1週間だけ。
明日出発だから、みんなに会うのは木曜日の今日が最後。
もぉ、みんな私よりお土産かいっ!!
「あなたっ!
楽しんでおいで〜っ」
「さびしぃよぉぉぉー!!!」
ニコッと笑って送り出してくれる友達。
「楽しむねぇ〜っ!!
私も寂しいっ!!」
放課後、みんなが帰り際に声をかけてくれる。
「てかあなた、部活出てかない?」
「あー、うん、準備あるし…。
今日は休むわ〜!」
「りょーかいですっ!」
「あなたさん?
何か忘れてません?」
美織が私の肩を掴んで言う。
「ん?」
忘れてるもの?
なんかあったっけ?
「か・し!!!」
1語ずつ強調して言う美織。
「あ。」
それか!
アメリカ行く前に、渡すって約束。
「まさか、まだ出来てないとか言わないでよね?」
美織がキッと睨んで見せる。
「出来てる出来てる!!」
私は慌ててカバンの中からファイルを取り出した。
危な。
私忘れるとこだった…。
「はいっ、これね!」
私は一枚の紙を渡す。
「おぉ、ありがと。」
「タイトルはまだ決まってないんだけど、とりあえず、これで。」
「了解っ。」
“片想い”をテーマにした曲。
優人との距離、優人への気持ちを参考に書いてみた。
片想い。
そりゃ、告白したいけどさ。
勇気がなくてできない。
もっと努力するべきなんだろうけど、できない。
だって怖いもん。
変に思われたくないもん。
そんな気持ちを歌った歌。
「曲、頼みます!!」
「よし!
頑張ります!
あなたが帰ってくる頃にはちゃんとした曲になってるから待ってな!!」
ガッツポーズの美織。
「お、期待してるよ!」
私はその肩をぽんっと叩いた。
「んじゃ、帰るね、バイバーイ!」
「うんっ!
気をつけて!」
「じゃぁねー!」
「いってら!!」
私は3人に見送られて教室を出た。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!