「おはよっ!
に、こ、虹太くんっ!」
「ぶはっ」
虹太くん=にじ、ということが判明した翌日の朝、教室にいたにじに挨拶すると盛大に笑われた。
「なによー!
虹太くんって呼べって言ったのにじなんだからねっ!」
都合の良いことに、この教室には私とにじ、悠貴以外誰も来ていない。
「ごめんごめん、だってド定番じゃん、“に、こ、虹太くん”って」
「もーうるさいーっ!」
虹太くんがにじと分かって、なんか意識しちゃう自分がいる。
これはもしや、私、本気で恋しだしたか!?
「ふぁぁぁ…」
そんな空気をぶち壊すかのように、悠貴が大きなあくびをする。
イラッ。
「つか、なんでこんな早く学校来なきゃいけねぇの…
まだ7時半じゃん…」
「いーじゃん、3人で話せるのこの時間くらいしかないんだから!
駅は私たちの家から逆方面なんだし、悠貴は部活違うから話せないし…。」
それに、悠貴の寝坊のせいで遅刻しそうになることもないし!
「話すことあるかぁ?
めっちゃ眠い。」
そう言って悠貴は机に突っ伏した。
「もー…。」
「まぁまぁ、悠貴もサッカー部だから疲れるんだよ、寝かしてやっとけっ」
んま、そーか。
「でもさー、なんでこの学校に来ようと思ったの?
前に言ってた吹部の事だけ?
やっぱり、こっちの環境が好きだったんじゃない?」
「んー、あなたがいたから、かな。」
ドキッ…。
えーっとぉ…。
「な、なんで私がこの学校って知ってたの?」
「あなたと悠貴が話してるとこ聞いたんだよ。
高校見学の時に。
一応、ここも見とこうと思って来たんだ。
そしたらたまたま2人を見つけて…お互いに“あなた”“悠貴”って呼びあってるから、きっとそうなんだろーなぁと。
昔の二人と話してる感じも顔も少し似てたし。
そこで、二人が絶対ここに入るって言ってるのが聞こえて、賭けてみた。」
そうだったんだ…。
高校見学のときなんか、ほかの人はみんな敵って考えてたから気にしなかった。
でも、その中の一人に、にじがいたんだね。
「じゃあこの学校にしてよかったっ!
私、学力的にちょっと厳しいって言われてて、ほかの学校にしようか迷ってたんだけど、頑張ったんだよ。」
「へぇ、じゃあ、ここでまた会えたのはそのあなたの努力のおかげだな!」
ニッと歯を見せて笑うにじに少しドキッとする。
やっぱ私、にじのこと…?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。