「はっくしゅんっ!」
「うわ、びっくりした〜」
「ごめっ…」
只今、ペーパーフラワーを作っている最中。
…風邪でも引いたかな。
「これ今日中に作り終わる〜?」
「んね、不安になってきた…。」
クラスの女子半分でこの作業、もう半分はメニュー表作り、男子は大工仕事。
…さっきサッカーして遊んでた男子達もいたけど。
私たちは壁に5列ずつ、ペーパーフラワーを貼らなきゃいけない。
多い…。
「流れ作業の方がいいかなー…」
「よし、そーしよ。」
というわけで、私は花びらを広げる作業を延々と繰り返す。
単純作業ほどつまらないものは無い。
一枚一枚広げてはダンボールに入れていく。
ま、みんな話しながらやってるからストレスっとほどではない。
「んじゃーそろそろ一旦休憩にしよ!」
1時間作業を続けた後、10分ほど休憩することにした。
割と作れるもんだなぁ、半分完成。
今日中には終わるね。
「あなた、飲み物買ってくるけどなんかいる?」
七海が声をかけてくれる。
「ありがとー、じゃあ、イチゴオレで!」
「りょうかーいっ、三空はー?」
「あ、私ついてくー」
二人が教室を出ていく。
なんか作業がないのもこれはこれでつまらない。
暇だ。
紙が飛ぶからって扇風機もつけてないんだよね、この教室。
…あつい。
そう思い、風通しの良い廊下に出る。
「おう、あなた、おつー」
「あ、おつかれー」
ドアを出ると悠貴とばったり会った。
…なんか暑くない?
ぶわっと体温が上がったような気がする。
「あれ?あなた顔赤くね?」
「え?」
そっと悠貴の手が私のおでこに触れる。
「!」
「んー、ちょっと高い?」
自分のおでこにも手を当てて比べる悠貴。
「てか、さらに顔赤くなってる気がするんだけど。
お前熱あるんじゃね?」
熱?
「んー、でもだるくはない。」
確かに、さっきくしゃみしたけど。
やっぱ風邪?
「ちょいお二人邪魔〜っ」
手に麦茶とイチゴオレを持った七海が言った。
後ろには三空。
悠貴の手がパッと離れる。
…あれ?
「わりっ」
悠貴がそう言って退いた。
私も教室の中に戻る。
ドアの真ん前だったから、ホントにじゃまだよね〜…。
てか、三空、どう思ったかな?
不安にさせちゃったかな…?
「はいあなた」
「あ、ありがとっ」
七海からイチゴオレを貰う。
そしてまた作業に戻った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。