第30話
ちゃんと伝えたい
「ふぅ、そろそろ一旦休憩しよ。」
午後3時、私たちのクラスは休憩時間を取ることになった。
お昼を食べた時に1時間の休憩があったけど、この暑さと午前中の疲れで割とダルい。
…悠貴の姿が見当たらない。
それに、三空も。
もしかして2人…既に付き合ってるとか…?
今日1日、悠貴と目が合わない。
目が合ったとしても逸らされる。
私、嫌われてるのかな?
嫌われるようなこと、なにかしたかな?
これって、告白したら、迷惑じゃない?
どうしよう、告白。
「なーに暗い顔してんの!」
「わっ!?」
後ろから七海の声。
振り返ると、七海は仁王立ちの状態。
「…だって、不安なんだもん…」
もし振られたら…このまま話せなくなっちゃうのかな?
気まずくなっちゃうのかな?
そんなの嫌だよ…。
そう思ってる心。
「じゃあ、やめるの?」
でも、少し期待してる心もいる。
だから…私…ちゃんと悠貴に好きって言いたい。
この気持ちを伝えたい。
「ううん、言うよ。
頑張る。」
そうだよ、“当たって砕けろ”だもんね!
…とは言いつつ、不安は消えないもので。
悠貴がどこにいるのか探しに出てしまう。
「っはは!
それはねーわっ!!」
下駄箱の方まで行ってみると、悠貴の声が聞こえた。
…なんかすごい笑ってる。
「ほんとだよー!
それでさぁっ」
!?
三空、の声…?
ドクンドクン。
重く響く私の鼓動。
今までの不安が倍になる。
1年の下駄箱の方から順に奥へ。
2人が仲良く話してるなんて…ヤダ。
でも足が止まってくれない。
「っ…」
こんな所、見たくなかった。
私たちのクラスの下駄箱の前で、悠貴と三空が笑い合っていた。
しかも、悠貴の手は三空の腕を掴んでいる。
「あ、あなた!」
悠貴は私に気がつくと、パッとその手を放した。
…なにそれっ。
まさか、やっぱ付き合ってて…。
私にバレないために、今手を放した?
「お前も三空見習って女子力上げろよな〜、わり、三空絆創膏サンキューな。」
「ううんっ!全然!」
悠貴は三空から受け取った絆創膏を張りながら言った。
…。
無性に腹が立った。
三空に勝てない私に、鈍感で私が傷つく言葉を平気で言ってくる悠貴に。
「…。」
私は何も言わずに二人に背を向けてその場を去った。
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