声を聞くと携帯を閉じて私の方に来た
蓮も色んな子を振るのつらかったのかな
下を向いてると大きな手が私の頭に乗って左右に動いた
蓮は何でいつも私の欲しい言葉を何も言わなくてもわかってくれるの?
上履きからローファーに履き替えて正門を出ると10分ほどで公園に着いた
誰もいなくて遊具はブランコとすべり台しかない
2人で成長するにつれて乗らなくなったブランコに久しぶりに乗った
ゆっくり前後に動かす
このゆらゆら動く感じが昔は大好きだったのに何で今は乗らなくなったんだろう
立ちこぎから座ろうとした時足を滑らせて落ちてしまった事がある
立ちこぎしてた私が悪いけど…
後頭部を打った私は立ちもしないで地面に寝転んだまま号泣した
その後病院に一応行ったけど大したことは無かった
知らないうちに守られてたんだな
適当なようでちゃんとしている
蓮のいい所
前後に揺れるブランコの音が響く
下を向いていると影ができた
そして
カシャン__
ブランコが動きを止めた
いや、止められた
目線を上にやると蓮がブランコの鎖を両手でしっかり掴んでいた
それは逃さないと言われてるみたいだった
心臓の鼓動がこれまでにないくらい早い
早すぎて怖いくらい
蓮__
あれほどうるさいと感じていた言葉が今はすごく嬉しい
少し頬を染めて言われた台詞に目頭と目尻が熱くなってくる
ブランコから立ち上がると私は大好きな人の背中に腕を回して
精一杯の返事をした
私の背中に腕を回した蓮
今までより強く、強く抱きしめてくれている
私も嬉しすぎてどうかなりそうだよ
しばらくして離れる
今まで付き合っていた子とは本気じゃなかったんだ…
でも私が蓮の本気で好きになった相手
その事実がとてつもなく嬉しい
いつまでも公園に居るわけにはいかないので出る事にした
出入り口を通ったときいきなり蓮が振り向いて
手を差し伸べてきた
私は待っている手に自分の手を乗せて指を絡ませた
本当の恋人になったそれはとてもドキドキして緊張した
それでも【幸せ】が勝った__ 。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。