泣いて泣いて泣くだけ泣いて…。
ようやく落ち着いた頃、悠斗は私を見て少し照れながら笑った。
私はそんな悠斗を見て、釣られて笑った。
伝えてみれば、どうということはない。
伝えるまでは、幼馴染のこの関係が壊れる不安もあったが、お互いの気持ちを改めて知った今、たとえ学校で距離を置いていても心が繋がっているという安心感がある。
どうしてもっと早く伝えなかったのだろう…。
ふとそう思った。
けれどそれは、全てを伝え終わったから言えることなのだろう。
先の見えない未来ほど不安なものはない。
そして未来はいつだって目に見えないものなのだ。
気持ちを伝える前の、未来の見えない私は怖くて怖くて堪らなかった。けれど、未来を切り開こうと必死でもがいた結果が今なのだ。
そう考えると、何だかまた一つ大人になれた気がした。
それから暫く二人きりで話した。
公園に入ってすぐのベンチに深く腰をかけ、悠斗は私の手の上にそっと自分の手を重ねていた。
悠斗の体温が私に伝わる。
きっと私の体温も悠斗に伝わっているのだろう。
私は軽く頷いて、悠斗と共に帰路についた。
しかし、家へ帰る途中で悠斗の元にメッセージが届いた。
クラスメイトからのものらしい。
そう言いつつも名残惜しそうにする悠斗に、私は「またね」と告げる。
悠斗はこれ以上ないくらい無邪気な笑顔を浮べ、そのまま公園への道を戻っていった。
家に着いた私は、幸せな気持ちで満ちていた。
まだ十数年しか生きていないけれど、人生全ての運を使い果たした程に大きな幸せを感じていた。
あとはいつも通り、お風呂に入り、ご飯を食べて、寝る。
たったそれだけ。
そう、それだけのはずだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。