第9話

空蝉
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2017/10/04 08:27
いつもと変わらない一日の始まり。
けたたましく鳴る目覚ましの音。

いつも以上に耳障りに感じるのは気のせいだろうか…。
ふと昨日の葬儀で見た悠斗の姿を思い出す。
死化粧でいつもより更に綺麗になった、悠斗の顔を。
私は現実から目を背けるように、毛布を被った。

…静寂が訪れる。
何もない。色も、音も、悠斗も…。

私だけの世界になった。一人の…独りぼっちの悲しい世界。
毛布で包まれた温もりが、あの花火をした日の悠斗の体温を想起させる。

自然と涙が溢れた…。

もうどこにもいない悠斗を想って。
もう届かない自分の想いを憐れんで。

今日は、私にとっては夏休み明け初めての学校。

通い慣れたはずの学校へ続く道のり。
いつも以上に長く感じた。
それはきっと、隣に悠斗がいないからだろう。
そう理解した瞬間、悠斗は死んでしまったのだという現実に襲われた。


悠斗がいない世界で、私が生きる意味。


どんなに探しても答えが見つかりそうにない。
いっそのこと死んでしまおうか。
それから私は抜け殻のようになった。

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