いつもと変わらない一日の始まり。
けたたましく鳴る目覚ましの音。
いつも以上に耳障りに感じるのは気のせいだろうか…。
ふと昨日の葬儀で見た悠斗の姿を思い出す。
死化粧でいつもより更に綺麗になった、悠斗の顔を。
私は現実から目を背けるように、毛布を被った。
…静寂が訪れる。
何もない。色も、音も、悠斗も…。
私だけの世界になった。一人の…独りぼっちの悲しい世界。
毛布で包まれた温もりが、あの花火をした日の悠斗の体温を想起させる。
自然と涙が溢れた…。
もうどこにもいない悠斗を想って。
もう届かない自分の想いを憐れんで。
今日は、私にとっては夏休み明け初めての学校。
通い慣れたはずの学校へ続く道のり。
いつも以上に長く感じた。
それはきっと、隣に悠斗がいないからだろう。
そう理解した瞬間、悠斗は死んでしまったのだという現実に襲われた。
悠斗がいない世界で、私が生きる意味。
どんなに探しても答えが見つかりそうにない。
いっそのこと死んでしまおうか。
それから私は抜け殻のようになった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。