とある王国ーー
「この用無しが!!剣術もできず投げ出し。動物の世話とは何事か!!!」
何も言い返すことの出来ず涙目になっている少年。
その手にはかわいらしい子ウサギが抱き抱えられていた。
少年「…お父さん…」
少年の父「父上と呼べと何回言えば分かるんだ!!!」
頭から怒鳴り散らす父上。その威力で子ウサギは少年の手からすり抜け逃げてしまった。
少年の父「見ろ!!あれだけお前が可愛がっていたのにも関わらず!!尻尾を巻いて逃げおったぞ!!!それがお前のやりたかったことなのか?そんな時間を持て余すくらいなら少しは国のために役に立とうとは思わんのか!!」
少年「国とか…そんなの僕は…」
少年の父「お前は三男だがこの国の王子。ちゃんとしてもらわなくては困る。だから俺から命令を下す。
最後の命だ。」
父上はそう言うとある紙を僕に渡した。
その紙はとある国の王女との縁談だった。
少年「僕には…まだ無理だよ…縁談なんて!!」
だが、どれだけ否定しても父上が僕の声を傾けることは無かった。
きっとこれが父上との最後の会話なんだと悟った。
僕は悲しくて、辛くて、部屋で泣いた。
その時、ふと部屋にある大きな鏡が目に入った。なんて不細工な顔をしているんだろう。
涙でぐちゃぐちゃになったその顔はとてつもなく惨めだった。
僕は昔、母上に教えて貰った歌を思い出した。
少年「鏡よ鏡、鏡さん…もしいらっしゃるならば、私の心を癒してください。
この世で美しいものを私に見せてください」
祈るように少年は言う。何度も何度も。
するとーー
『分かった』
突然鏡が光り出すと、その光は少年の部屋を人包に覆った。
その光の中で照らされたものーー
少年「あの子は…一体……?」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。