この頃二宮さんは新しくドラマの仕事が入り、元々忙しい二宮さんが更に忙しくなった。
何日も家を開けるのは当たり前。
居候させてもらっている上に忙しいから、家事や勉強はもちろん、最近はバイトも始めた。
お金が貯まったら、もちろんここを出ていく気。
忙しいのに迷惑なんてかけたくないから。
だから、もう少しだけ、迷惑かけさせてください。
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午後9時。バイトから帰宅すると顔を歪ませた二宮さんが出迎えてくれた。
どうやら今日は珍しく撮影が早く終わったようだ。
と言い、冷蔵庫にストックさせる予定のレジ袋を強引に奪い、リビングに消えてしまった。
そうだ。私は普通の高校生じゃないから、高校生らしい言い訳なんて通じるわけ無いんだ。
そんな事を考え、新たな言い訳を考えていると、二宮さんが近付いてくる。
…え?
二宮さんが人を心配するイメージなんて無かったから、その言葉を聞いた瞬間驚いたけど、
嬉しさの方が勝ってしまうんだ。
なんて言われるから、初めての感情に戸惑ってしまう。
そんな私に構わず、二宮さんは私を見詰め、優しく頭に触れた。
二宮さんの為に始めたバイトなのに。
こんなにも追い詰めてしまった。
私に背を向けた二宮さんに向かって、
喉が苦しいけど、頑張って声を絞り出したら、二宮さんがこっちを向いてくれた。
私は、心のどこかで「もう人と関わりたくない」って思ってた。
バイトを始めたのも、二宮さんに迷惑を掛けたくないから、なんて綺麗な理由じゃなくて、
「二宮さんと関わりたくないから」だったのかもしれない。
でも、今そんな感情は綺麗さっぱり無くなったような気がするんだ。
この人に頼りたい。 そう思えたんだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!