炭酸のように淡い日々。戻れない青春を今、駆け抜けよう。
拗らせてるねと、誰もが思うような恋。ジリジリと胸が痛い。橘優紀は絶賛片想い中だ。それも、2つ年上の先輩に4年間も。
近所に住んでいて、いつも遊んでもらったり勉強を教えてもらったり。
そして、気持ちに気づいたのが中1のとき。先輩は中3で、野球部の主将を務めていた。そんな姿を見て、気づいた時には虜になっていた。
近づきたいが為に、野球部マネにまで駆けつけたけど、気持ちを伝えるって言うのは、そう簡単に行かない。それから4年、高校にやっと入学できたと思ったら、先輩はもう大学受験な訳で…。
先輩はいつも通り私に声をかけてくれる。でも、それがこんなにも苦しい。
この気持ちを伝えたら、距離が出来てしまうかもしれない。この気持ちを伝えたら、先輩はどう思うのだろうか。不安は募っていく一方なのに、それ程に想いは加速して。そして、事件は起きた。
「蓮人くんが好きです!付き合ってください!」
ーーーーーーードクン ドクン
心臓が飛び出るかと思った。何で、下駄箱の前で告るかなぁ…。
優紀が帰路につこうと下駄箱にやってきた時、蓮人ーー4年間の片想いの相手ーーは告白を受けていた。蓮人の顔は赤らんでいて、それを見てかっこいいと思うのに、心臓はギュッと苦しくなる。
息が止まりそうだ、彼が返事をする前に、涙が滲まないうちにここから去らなくては。そう思うのに、何でか体は動かない。
「えっと…ごめん、俺好きな人いるんだわ。そいつに諦めつくまで、彼女はつくれねぇから。ごめんな?」
あぁ、聞いてしまった。優紀は、震える足を無理矢理に動かして俯いて走り出した。
ーーー先輩の「好きな人」。誰なのだろうか。聞きたくない。でも、知りたいなんて我儘だろうか。でも誰だって思うのだろう。誰かを想っているのは辛くて、辛くて…。でも、その誰かが笑うのを見ればそんな辛さなど吹き飛んでしまう。
先輩の好きな人が、私ならいいのにーーー
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。