ひとりっきりの部屋の中、俺はベッドに寝っ転がり、天井を見上げていた。
一言で言うなら、俺はあなたが好きだ。小さい時から。
普通の人なら《ドキッ》としたり《キュン》とかするようなことを、自分でも言っている気がするのだが、相変わらずアイツは気が付かない。アホか。
《湯野 暁(あきら)》は、小学からの友人だ。もちろんあなたも知ってるし、よく遊んだやつだ。高校に入ってからは別々になって、電話くらいでしかやり取りしてないけど・・・・・。
機会を通して聞こえてきたのは、高校生にしては少し高い声。女子まではいかないが、それが暁の声だ。
電話越しで顔は見えないが、暁のニヤけた顔が声色から想像される。まったく・・・・。
素直になるしかないだろう。自分でも思いつかないんだから。
俺は「じゃあな」と言って、通話を終了した。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!