俺はあえて高校に着く時間を、いつもよろ早くした。これも、あなたのためを思ってだ。
朝登校中に会いたくないやつに会いたいわけないからな。
私は、あえて早く家を出た。もちろん、慧に会わないために。
慧は寝坊野郎だ。早く来るはずもない。
苦笑いを浮かべ、小さく独り言を呟いた。
しばらく歩くと門が見えてきた。時間が早いせいか、人はいつもより少なかった。のに──
見ただけならかっこいいメガネのイケメン先生なのに、中身を知っちゃうとなんか残念だ・・・・。
もうそろそろ慣れたいけど、あの笑顔はやっぱり怖い。
とりあえず返事をして、少し早足で校舎へ向かった。
校舎に入り靴を履き替え、教室へ向かった。
慧なしでの登校は、たぶん初めてだ。なんか面白い!
ちょっとワクワクしながらも、教室のドアを開けた。
おぉ!慧がいないこと以外は変わらな──
『遅い』って言った?早めに出たんだけどな?
席を見れば、慧はもう座っていた。
驚きと焦りで、その場に立ち止まった。でも、慧は私を見なかった。
目を──顔をこっちに向けてくれないことが、とても寂しく感じて、胸が寂しかった。いつも一緒だったからかもしれないけど・・・・。
私も、慧の近くには行かないことにした。
私が着席すると、4人の女子が机を囲んできた。めんどくさい人だー。
なるほど。付き合ってると思ってるな?
いつも一緒にいたせいで、恋愛関係だと見られるのは慣れてる。
否定の言葉はいつも言ってた──なのに、一瞬感じた胸の痛みはなんだろう・・・・。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!