第13話

黒い人
540
2017/10/12 11:32
放課後の帰り道、私は懐かしの公園にいた。
高校生が小さい子用のブランコに乗っているのもあれだけど、夕方の公園には誰もいなかった。
いつも隣にいたアイツがいないからから、なんか寂しい・・・・。
あなた

懐かしいな、このブランコ・・・。公園も、全くって言っていいくらい変わってないや

小さい時の記憶が、いくつか頭に浮かんだ。

砂場で《さとちん》と作ったお城。
シーソーの真ん中にのって、バランス対決を《さとちん》としたこと。
ベンチに《さとちん》と座って、お互いのカブトムシ使ってやった相撲。
ここの公園であったお祭りの時に、《さとちん》と水ヨーヨー持って走ったこと──さとちんばっかりだった。
あなた

浴衣、「似合ってる」って言われたっけ

思わず思い出し笑いをしてしまって、ますます寂しくなった。

学校では、結局話をしていない──そもそも、目さえ合わせてもらえなかった。周りにはいつもより女子が多かったし、いつも無視してるのに応えてたし・・・・。
ため息しか出てこなかった。
??
あなた!
誰かが後ろから声をかけてきた。すぐ後ろじゃなくて、おそらく公園の外の道から。
思わず悲鳴をあげそうになったのをこらえて、ゆっくり振り返った。
不審者だとか怪しい人だったら──なんて考えていたけど、ある意味私は驚いて、声がすんなり出てこなかった。
あなた

え・・・さと、ちん?

フェンスに手をかけ、息は荒くなっていた。
肩が上下に動いていた本人の顔は、見たことないくらいに目を開き、とても青い顔をしていた。
慧
何やってんだよっ・・・早く帰──
あなた

なんで・・・

私はベンチから立ち上がった。
足が少しふらついて倒れそうになったけど、それよりもさとちんだった。
慧
は?
あなた

なんで、来たの・・・?

慧
そりゃあ、帰ってくる時間になっても家にいないし──
あなた

そうじゃないっ!

私が聞きたいのは、そういうことじゃない・・・。
さとちんに対して、こんな声を荒らげたことはなかっただろう。本人も目を大きく開けて、驚いた様子で私を見ていた。
あなた

なんで、避けたのに──自分から近づいてくるの!

学校では目も合わせない。それは、さとちんなりの気づかいだと思った。
私だって、色々考えて近づかない方がいいと思った。頭の整理だって、した方がいいのかなって。
慧
・・・なんとなく、あなたが帰ってこない気がした。ここらへん物騒だし、襲われたら嫌だし
たしかに、物騒だとは江崎先生も朝言っていた。頭から抜けてた・・・・。
慧
とりあえず、危険だし帰ろう。それに──
??
ねぇ君たち!
私たちに向けられた声は、公園の反対側の道路から発せられていた。
すると、その道路にある電柱の明かりの下に、1人の男がいた。見た感じは普通の人なのに、その人の浮かべた笑が、恐怖を感じさせてきた。
シュン
シュン
やぁ、ボクは《シュン》。君たちと話したくて来てしまったよ
シュンと名乗る男は、ゆっくりこちらへ歩いてきた。
すると、いつの間にフェンスを超えて来たのか、さとちんが私の隣にいた。
慧
来るな
さとちんにしてはとても低い声だった。顔を見上げると、歩いてくる男の人を睨んでいるようだった。
シュン
シュン
安心して!ボクは普通の警察関係の人さ。なんでここにいるのかっていうと、君たちにナカを見せてほしくてねぇ
バッグの中かな?まぁ、逮捕されるよりは、見せた方がいいよね。
あなた

わかりました

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