放課後の帰り道、私は懐かしの公園にいた。
高校生が小さい子用のブランコに乗っているのもあれだけど、夕方の公園には誰もいなかった。
いつも隣にいたアイツがいないからから、なんか寂しい・・・・。
小さい時の記憶が、いくつか頭に浮かんだ。
砂場で《さとちん》と作ったお城。
シーソーの真ん中にのって、バランス対決を《さとちん》としたこと。
ベンチに《さとちん》と座って、お互いのカブトムシ使ってやった相撲。
ここの公園であったお祭りの時に、《さとちん》と水ヨーヨー持って走ったこと──さとちんばっかりだった。
思わず思い出し笑いをしてしまって、ますます寂しくなった。
学校では、結局話をしていない──そもそも、目さえ合わせてもらえなかった。周りにはいつもより女子が多かったし、いつも無視してるのに応えてたし・・・・。
ため息しか出てこなかった。
誰かが後ろから声をかけてきた。すぐ後ろじゃなくて、おそらく公園の外の道から。
思わず悲鳴をあげそうになったのをこらえて、ゆっくり振り返った。
不審者だとか怪しい人だったら──なんて考えていたけど、ある意味私は驚いて、声がすんなり出てこなかった。
フェンスに手をかけ、息は荒くなっていた。
肩が上下に動いていた本人の顔は、見たことないくらいに目を開き、とても青い顔をしていた。
私はベンチから立ち上がった。
足が少しふらついて倒れそうになったけど、それよりもさとちんだった。
私が聞きたいのは、そういうことじゃない・・・。
さとちんに対して、こんな声を荒らげたことはなかっただろう。本人も目を大きく開けて、驚いた様子で私を見ていた。
学校では目も合わせない。それは、さとちんなりの気づかいだと思った。
私だって、色々考えて近づかない方がいいと思った。頭の整理だって、した方がいいのかなって。
たしかに、物騒だとは江崎先生も朝言っていた。頭から抜けてた・・・・。
私たちに向けられた声は、公園の反対側の道路から発せられていた。
すると、その道路にある電柱の明かりの下に、1人の男がいた。見た感じは普通の人なのに、その人の浮かべた笑が、恐怖を感じさせてきた。
シュンと名乗る男は、ゆっくりこちらへ歩いてきた。
すると、いつの間にフェンスを超えて来たのか、さとちんが私の隣にいた。
さとちんにしてはとても低い声だった。顔を見上げると、歩いてくる男の人を睨んでいるようだった。
バッグの中かな?まぁ、逮捕されるよりは、見せた方がいいよね。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。