理解が追いついた時には、さとちんにキスされていた。目の前には綺麗な瞳があって、口には柔らかい感触があった。
口が離れるまでは、一瞬の出来事だった。
さとちんだからか、触れた部分が熱い。私は思わず、手で口を覆ってしまった。でも、嫌だとは思わなかった。
即答だ。でも、今のでなんとなくわかってきた。
さとちんに抱くこのもやもやは、【愛】とか【恋】の類かもしれない。
目の前にいる彼は、にやりとしていた。
普通に思ったこと言っただけなんだけどな・・・。
私が頬を膨らます一方で、さとちんは笑っていた。
さとちんもこんな顔、するんだな。
いつも一緒にいた仲だけど、こんな幸せそうに人前で笑うのは、あんまり見たことがない。
ちょっとひどかったかもしれないけど、心の中では少し嬉しかった。
うお。まじのトーンだ。
笑っていた表情をやめ、私はさとちんの顔を見た。
口角は上がっていなくて、目は私だけを見ているようだった。でも、その表情にいつも持っている、彼なりの自信とかは無いように見える。
緊張しているのかわからないけど、私はさとちんの頬を引っ張った。
それだけ言ったあと、私は速やかに手を離した。さとちんは私に引っ張られた場所を、手で擦った。
さとちんと付き合う──ちょっと悩んだけど、自分なりの答えを出した。
イエスの返事は来ないと思ってたのか、さとちんは『え?』と繰り返し言った。その反応がなんか可愛くて、私は笑ってしまった。
私はさとちんに、プレゼントがあると言って、目をつぶってもらった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。