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第4話

マネージャーになる?!
39
2019/02/18 15:55
そうしてわたしは部活動見学に向かったわけだけれど、 正直どの部活も向いてない。

家庭部 お菓子を焦がしてしまう
テニス部 ラケットにボールが当たらない
バレー部 バスケ部 経験者ばっかで怖い
吹奏楽部 経験者だけど、もういざこざは嫌
etc…
結局はーちゃんは先輩達と仲良くなってすっかり吹部に入るつもりでいて、音楽室で別れたし、なあちゃんはバレー部のマネに勧誘されて体育館で見学中。 わたしとらんらん2人で回ることになった。そんな中、わたしは自分の残念さにすっかり悲しくなっていた。
どうしよう。わたし何も出来ないまま高校生活終えるのかな?そんなの嫌だよね何かわたしに出来ることってないのかな?


そのとき。
「ねえ、めえ。ちょっと一緒に付き合って欲しい部活があるんだけど。」
「全然いいよ!何部?」
「ラグビー部なんだけど、1回でいいから一緒に練習見に行かない?絶対面白いから!」
「え、わたしプレーするのは絶対やばいと思うよ、運動神経もないし…」
思ってもないらんらんからの提案に狼狽えていると、
「大丈夫よ!蘭ちゃんの言う通りとっても楽しくてアットホームな部活よ!プレーヤーも募集してるけど、今ちょうどマネージャーも募集してるの!」突然とんでもない長身美人から声をかけられた。
「あ!みのりさん! めえ、この人ラグビー部のマネージャーさん。 お兄の同級生」
どうやらこの長身美人はらんらんの知り合いらしい。
「めえちゃん、って言うの? 突然声掛けてごめんね。びっくりしたでしょう? ラグビーって聞くと分からなくて不安になるかもしれないけど、まだ部活決めてないんだったら1度見に来てみない? 絶対後悔はさせないから。」
ね?っていうみのりさんの完璧なスマイルを受けてわたしはとりあえず、部活を見に行ってみることにした。


ラグビー部はグラウンドの奥の方で練習していた。 どうやら今日は見学に来ていた1年生向けのメニューらしくタッチフット(タックルの代わりにタッチして相手を止めるゲーム)という練習をしていた。 みのりさんの話では、最近部員数が少なくなっていて、なんとか15人制のゲームに出るために(ラグビーは15人制なのだ)部員確保に必死なのだとか。
らんらんの双子の姉 凛ちゃんも見学に来ていて、らんらんと2人で男子に混ざってタッチフットを楽しんでいる。 女子部員は3年の先輩が1人で、もし後輩が増えるなら練習がやりやすくなるから嬉しいと話していた。ラグビー、と聞くとすごくごつい人を想像するけれど、この先輩は全くそんな感じではない。 むしろ線が細くて倒れてしまいそうな、The女子って感じ。 それでも男子の中でやれているということはほんとはすごくごついのかも?とか考えたり。笑
男子の先輩たちはごつくて怖そうだしずっと走ってきついだろうけど笑顔が絶えない。というか、ずっと何かしら話している。
それは思わず聞いていてくすっと笑ってしまうようなくだらない話だったり、見学に来ている子たちへのアドバイスだったり様々だったけど、とにかく話し声が途絶えない、うるさいぐらいに賑やかな部活で、最初考えていたラグビーに対する怖そうだとか、不安に思う気持ちがだんだんと消えていくのを感じた。

わたしが圧倒されたような目でみんなを見ていると、みのりさんが笑顔で話しかけてくれた。
「すごいでしょ。ラグビーってね、球技の中でいちばんコートに立つ人数が多いんだってさ。でも、だからと言って、誰かがやってくれるって人任せじゃだめなの。一人一人が自分の役割を責任もって果たさないと勝てないし、沢山ポジションがあってね、大きい人も小さい人も、太ってても痩せてても、足が速くても遅くても関係ない。みんながチームのために必要な存在なの。ONE FOR ALL ALL FOR ONEって聞いたことない?ひとりはみんなのためにみんなはひとりのために。まさにそういう感じなんだ。」確かに練習はきつそうだよ。みててもやりたくないなーって思うもん。笑
とみのりさんは笑いながら言う。
「でもプレーヤーのみんなはやるんだよね。チームのために自分の求められる役割を果たせるように。トライをとるために。だからわたしはそんなみんなを支える仕事をしてる。わたしはきついこと出来ないけど、みんな私の事同じチームの大切な仲間として扱ってくれるしね。みんなのサポートをするのは楽しいよ。」

そう話すみのりさんを見ていてすごく羨ましくなった。 誰かを支える。その仕事がとても立派でかっこよく見えてきた。何にも出来ない私だけど、やってみたい。いや、やってみせる。

「わたしも、みのりさんみたいなマネージャーになりたいです。頑張ってるみんなを支える仕事をしたいです。」
わたしがそう言うと、みのりさんの笑顔が一段と輝いた。
「ほんとに?!やってくれるの?嬉しい!これから一緒に頑張っていこうね。」

よろしくね、と笑顔で手を差し伸べてくれたみのりさんの手をぎゅっと握り返す。
グラウンドには西日が刺していた。

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