「一ノ瀬 葵です。よろしくお願いします。」
と淡々と自己紹介を済ませた。
「んじゃ、席はー、あなたの隣な!」
「はい、」
と、こちらに歩いてくる。
うわああああと叫びたい気分。
そのまましばらくして、チャイムが鳴り、みんなが葵の周りに集まってきた。
幼い頃の葵は優しく、穏やかでよく笑う子だった。
けど、そんな面影はもうなく、静かで落ち着いて居る。
だからみんなから話しかけられてもそっけない態度で
めんどくさそうにしていた。
1時間目が終わり、2時間目の移動をしようとした時、ふと葵をみた。
葵はまだ場所もわからないだろうと思い、勇気をだして声をかける。
「あの、葵。」
と言ってから気づいた。覚えているかどうかも、本当にあの葵なのかもわからないのに。
「あ、ごめんね。えっと、一ノ瀬君。次、移動だから一緒に行こ?」
心臓がバクバクだよ!!
「うん。お願い」
「じゃあ行こっか」
あぁ、声かけてよかったぁ。
少し2人で話したいと思い、美麗には声をかけ、先に行ってもらった。
無言が続く…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!