「アンケートお願いしま~す」
駅前で若い女に声をかけられた。
サングラスをした髪の長い女だった。
暇つぶしに相手にしてやった。
どうせ何かの勧誘だろうし。
案の定、会話が馴れ馴れしくなってきた。
もっと色々お話ししましょうだとさ。
へぃへぃ構いやせんよ。
慣れた感じで近くの喫茶店へ。
席に着くなり女はおもむろに話し始めた。
「臓器売買に興味ありませんか~」
はぁ!?
「臓器売買というのは合法的な臓器移植では助からない人達を救える立派なビジネスなんですよ~」
「アジア各国では既に何十万もの人達が臓器売買の恩恵を受けているんですよ~」
………!?
女のテンションが徐々に上がってきた。
「日本人のブローカーに◆♀@☆∞$!!」
更にヒートアップして
「£☆*●★!! ※?∽§♯%*@♀*!!!」
何なんだこのアマ…!?
想定外の展開に困惑する俺に対し、
興奮度MAXのそいつはかけていたサングラスを外して大声でまくし立てた。
「あんたの目ん玉 すぐ売ってちょうだい!!!」
サングラスの下は眼球が無く、ぽっかりと黒い穴が空いているだけだった。
俺が人生で初めて
脱兎のごとく逃げ帰った瞬間だった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。