わたしは空を飛んでいた
そしてあの国民的アニメのように
拓海にパンチを食らわせていた
もう、空を飛んでいる時点でこれは夢だなと自覚してからけっこうやりたかったことをやりたい放題にやっている
でも途中から真っ暗な道を進み始めた
どこに進めばいいのか
どっちが前なのか
なぜわたしが進んでいるかもわからない
でも突然手をぎゅっと握られた
この手をわたしは知ってる
ずっとずっと小さい頃から知ってる
かけるくんの手だ
昔から変わらないこの優しい手
よくできた時には頭を撫でてくれて
泣いた時には背中をさすってくれて
嬉しい時にはハイタッチするこの手
あ、わたしこの人が好きなんだ
手だけでわかるほどキモいぐらいに好きなんだ
でもこの気持ちは心にしまっておかないとかけるくんはきっとわたしのそばにはもういてくれない
未羽が言ってたのはこのことだったのか
やっと気づけた気持ちだけど、この気持ちは墓場まで持ってくしかない
わたしは暗闇を闇雲に進んでるのにかけるくんは止まっていてただギュッとわたしの手を握ってるだけ
そしてわたしの名前を呼んだ
気持ちを隠さなきゃって今思ったのにやっぱり本能には逆らえなくてでわたしは暗い闇から体が上の方にシャボン玉のようにふわふわ浮かんでいった
目を覚ますと知らない場所にいた
心配そうにわたしのことを見る2人
この独特な匂いは病院かな?
あ、わたし学校で倒れたんだ…
右手には点滴が刺さっていてその先に
わたしとかけるくんの繋がれた手があった
そのあとバタバタと看護師さんやお医者さんなどが来て検査をすると
お母さんがお医者さんに呼ばれて
病室はわたしとかけるくんの2人になった
久しぶりに話した
ずっと隣の家にいたのに
そういってかけるくんはわたしのベットの横で手を握ったままベットに顔を伏せた
しばらくすると、握られてる手に温かい雫がつたってきて
かけるくんが泣いてるってわかった
ズズッと鼻をすって繋がれてない手で涙を拭くと
へぇ??
わたしは涙が出た
さっきこの気持ちがあるとかけるくんの隣にはいられないって思っていたのに
付き合ってくださいってことはこの気持ちがあってもいや、あるからこそ隣にいていいってことだよね?
もぉー顔なんか涙でぐちゃぐちゃだし
鼻水だってきっと垂れてるし
腕には点滴刺さってるし、
なにいってるかわかんないし
でも、わたしの伝えたいことは1つ
そういうとわたしを壊れ物を扱うように抱きしめて背中をさすってくれた
そして目が合うと自然と引き寄せられるようにキスをした
あ、久しぶりに心から笑った気がする
一緒に笑ったあとかけるくんは急に難しい顔になった
わたしはコクリと頷くといままであったことをひと通り話した
そういうとかけるくんはニヤリと笑った
でも、10何年と染みついた癖はねぇ
あぁー、どうしてわたしはこの人にはこんなに逆らえないんだろう
恥!最後の最後で噛んだ!!
こんどはギュッと力強くわたしを抱きしめた
そのあと母から根掘り葉堀り聞かれ
それは消灯時間まで続いた
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。