俺には、あなたと言う幼馴染がいる。
家も割と近所な彼女は人見知りで、
小さい頃は俺が話しかけても逃げて行ってしまって、
仲良くなりたかった俺は悲しかった。
4歳頃だっただろうか。あなたとちゃんと話せたのは。
運動会の演技で二人組みを作り踊る部分があった。
たまたま俺はあなたと組になった。
あなたは踊るのが苦手でよく間違えた。
※(幼)は幼少期の事です。
小さな声と、泣きそうな顔でそう言われ、
慌てて俺は明るく、
と言う。
そう言うとあなたはふわりと笑顔に変わった。
笑った顔を見るのは初めてだった。
小さいながらにとても可愛いと思ったのを覚えている。
もう、すっかり暗くなった空を駅のホームから
ぼんやり見ながら考えるあなたの事を考える。
けれど、別の事を考えても、すぐに頭の中に出てくる
親に勝手に決められた許嫁の事と親の都合での引っ越し。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。