第3話

バスケと私と後輩くん。
275
2017/10/16 10:24
キュッキュッ…
『リバウンド!!』
『速攻!』
バッシュが擦れる音と共に選手達の怒号が飛び交う体育館。
私は男子バスケ部のマネージャー…なんてそんな可愛らしいものではなくて、その隣のコートの女子バスケ部の一選手だ。

『シュート!』
そう言われたとある男子生徒はボールを貰うなり、きれいなフォームでボールを手から離した。
吸い込まれるように、ボールは弧を描いてリングに当たることもなく…




スパッ
後輩
っしゃ!
笑顔で喜ぶ彼。
そんな彼を見て、私も少し嬉しくなる。

私は、彼のことが好きだ。
でも、彼は後輩だし、今はバスケしか考えてなさそうだからこの気持ちはまだしまってある。


でも、いつかは…


ってダメだダメだ。自分のゲームに集中しなきゃ
ライバル
あら、あなたさん。そんなふうによそ見してる余裕があるのかしら?
と、ドリブルをつきながら話しかけてくる彼女。
一年生の頃からよくこうやって突っかかってくるけど、なんでだろ?
私は彼女が苦手だ。
キュッ!
ドリブルで抜いてシュートに行く気だ!
しかし、私の判断が一瞬遅れ、慌ててディフェンスをしようと足を出すと

ドンっ!
彼女はわざと私にぶつかってきた。
いったいな!と思っていたその拍子に、





グキっ

と自分の足から鈍い音がした。

あ、やばいと思った頃にはもう手遅れで。
ドサッと倒れ込んでしまった。
いった〜。
ピ────!
『オフェンス!チャージング!』
幸い、彼女のファールとなったが、私は立ち上がれない。
友達
ちょ、あなた大丈夫!?
慌てて友達が駆け寄ってくる。
試合は一時中断となってしまい、女子はともかく、ゲームが終わっている男子までざわつき始めてしまった。
あなた

あー大丈夫大丈夫!
こんなの全然平気だって!

私は元気な素振りを見せるが、ウソです。
めっちゃ痛いー!

早く立ってコートから出たいのに!
後輩
あなた先輩、大丈夫ですか!?
あなた

は!?
あんた男子なのになんでこっちきてんのよ!

後輩
先輩が怪我したら飛んでくるに決まってるで、しょ!
だからなんでよ!

そう言うと同時に私を抱えあげる。

こ、これは世にいうお姫様抱っこというやつ?!
あなた

ちょ、ねぇ!
恥ずかしいからおろして!

後輩
保健室行くまで下ろしません!
ライバル
あ、ねぇ?
彼女なら私が連れていくから、あなたは練習に戻りなよ!
彼女は少し焦ったように彼に話しかける。私を睨みながら。

あ、彼女、好きなんだ。こいつのこと
私はすぐに分かった。
でも、彼女の言葉は無視して、彼は男子の監督に
後輩
監督!ちょっとあなた先輩を保健室に連れていきます!
彼がこんな行動をとったことに驚きが隠せないのか監督は『お、おぉ…』と気のない返事をした。
~保健室~
後輩
まったく、何やってるんですか。
そう言いながらも湿布を貼ってくれる。
こういう優しいとこが好きなんだよなぁ。
あなた

しょ、しょうがないじゃない!
〜に見とれてたんだら…

後輩
ん?何に見とれてたんですか?
ちょっといたずらっぽく笑う彼にまたドキッとしてしまう。
あなた

な、なんでも良いでしょ!

照れてしまい、素直になれない。
こういう時、君だよ。とか言えたらいいのにな…
後輩
まー俺もゲームしながら見とれちゃう人いますけどね。
あなた

え!だれ!?

ビックリしたと同時に不安が押し寄せる。

もし、あの彼女とかだったらどうしよう…
後輩
あなた先輩、気になるんですか?
まっすぐにみつめてくる。
目が、そらせない。
素直になるなら、今だと思った
あなた

き、になるよ…?
だって私、あんたのこと好きだもん…

終わりがけが小声になってしまったけど言えた。

彼がどんな顔をしているのか分からない。怖い。
あなた

ねぇ!なんとか言っ、て、よ…

私は言葉を詰まらせた。





顔をあげると彼は片手で顔を隠しているが、
耳まで真っ赤なのがすぐに分かった。
あなた

え、なんでそんなに顔、あか…

質問を言い切ることができなかった。


その前に彼の唇に塞がれたから。
後輩
なんで先輩、先に言っちゃうんですか…
彼はキスを終えると、ぼそぼそと話す。
後輩
俺が、試合スタメンとったら言おうと思ってたのに…
あなた

え、それって…

私は、気づいた。
後輩
好きです。
ずっと、先輩のこと見てました。
バスケしてるところも、笑顔も、泣き顔も、全部が好きです。
あなた

な、泣き顔って!
あんたいつ泣いてるとこみたの!?

後輩
ウインターの前日のメンバー発表で先輩がスタメン落ちた日、俺はバッシュを体育館に忘れてしまって…
しまった!あの日か。
後輩
1人で悔しくて泣いてる先輩を見ました。

俺はそんな姿をみて

あぁ、この人を守ってやりたい。そう思いました。
あなた

見られてると思ってなかった…。

すっごい恥ずかしいんですけど!!
あの日はいつもスタメンだった自分が調子に乗ってたことに腹が立って、悔しくて…

でも、バスケをまた一から見直すいい機会だと思った。

それまで何となくやっていた自分が情けなくなってしまった。
全力でバスケを頑張る理由ができた。
後輩
あなた先輩、俺と付き合ってください。
あなた

…っ、はい!

私はもう一つバスケを頑張っていこうと思える理由ができた。

あんたがいるから、頑張れる
お互いに理解し合える



ありがとう。
後輩
でもまずは先輩はこの捻挫を治してくださいね!
あなた

はーい
わかってまーす

ふざけて返事をすると、



…チュッ。
あなた

え、

今、ほっぺにキス…
後輩
早く治るおまじないですよ!
彼の顔はゆでダコのように真っ赤だ。
後輩
じゃ、俺、練習戻るんで!
彼は恥ずかしくなったのかダッシュで保健室から出ていった。
あなた

…バカ…。

ちょっとだけ、早く治りそうな気がした。

プリ小説オーディオドラマ