「美桜ー!そろそろ時間よー!」
お母さんの起こす声とほぼ同時に体が起きる。
「えー!何でもっと早く起こしてくれないの ~!」
「起こしたわよ。あんたが起きないだけ。」
今日はやっとの思いで合格できた桜山高校の入学式。よりによってこんな日に遅刻だなんて。
行きたかった理由なんて皆みたいにしっかりしてない。大の親友『琴音』がいるから。
今日は大好きな食パンもまともに食べずに琴音との待ち合わせ場所まで飛び出た。
「行ってきまぁす!」
後ろからお母さんの怒った声が聞こえたけど気にしない。
だって今日はこれからの高校生活を決める大事な入学式なんだか…ドンッ
「うわっ!」
背の高い男の子とぶつかった。
「す、すいません!」
わぉ、見るからにモテる人。
制服が同じだから同じ学校の人だろう。
「ほんとにすいません!それじゃ」
一方的に謝って来たけど大丈夫だよね。
とりあえず今は琴音との待ち合わせ場所に行かないと。
「ごめーん!」
「遅~い。遅刻ギリギリ何ですけど~」
琴音がふてくされるように言う。
ノリだと理解するのにも一秒はいらない。
「走ってくよ!」
「ちょっと早いって!」
運動神経抜群の琴音の速さに追いつくのも大変。
琴音のおかげで私達はなんとか間に合った。
「新入生、入学おめでとう。今日も___」
校長先生の長い話を聞いた私達は教室へと戻る。
教室へ戻っても担任の先生の長い話がまたある。新入生だからか、皆しっかりと話を聞いている。
ふと目を前に向けた時私よりも離れた席に今日の朝ぶつかった男の子が座っていた。
眠そ…。
休み時間になり琴音とも運良く同じクラスだった私は琴音と話をしていた。
「何か来るよ。」
「何が?」
後ろを向くと朝の男の子がこっちに向かってきていた。
「あ…」
声をかけようと目を見た。
なんだか怒ってる?
そうだ!朝のこと怒りに来たんだ。
「琴音ちょっとごめん!」
「え?ちょっと何よー」
私は逃げるように教室から出ようとした。
何でついてくるの~…!!
男の子は驚いた顔をしながらもついてきた。
名前がわからないからだろうか、無言でついてくるから恐ろしい。
とりあえずあまり関わりたくなかった。
(朝謝ったよね?別に悪いことしてないよね?うん。)
その日はなるべく教室にいず、なるべく女子トイレで過ごしてた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。