紅羽は少し思考を巻き戻してから語り出す。その並べ立てられる内容があまりにも歪で。
貞斗は自身の知識をフル回転させる。そしてその数拍置いた後。
死人が甦る。
死人は普通、魂を抜き取られると一度墓所へ還り、記憶を書き換えられてもう1度母子たる中へ入る。
つまり───兵士は死亡したにも関わらず記憶の書き換え無しで魂が留まっている…。
貞斗はそう吐き捨てた。
兵士の心は引き裂かれている筈だ。外見だけを良くし、中身が空っぽの『人形』──。
貞斗は大口を開いて悠長な言葉を紡ぐ。
めんどくさそうに。でも愉快そうに。上げられた口角の意味を理解出来ないモノモノは一目散に。平須等に二つの標的─targetに寄っていく。
急にヘッドホン目掛けて飛び込んできた少年の声にあたふたしながら応じる。
又もや急に出てくる同僚の名。急いで支部の扉を押し開け、第五支部へ急いだ。
第五支部。別名『廃人処理班』。
能力に浄化──purificationを持つもの、或いはそれの類いのモノを持つ者等。
芽依と呼ばれた少女は退屈そうな欠伸を噛み締めてゆっくり席を立つ。
黒いローブが翻り、薄橙の髪が緩やかにウェーブを描いている。
少女は軈てその顔を笑みと好奇心に変える。それが───スベテノカイセンノアイズデアル。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。