聞かれるのは…分かっていた。
何故か。何故だろうか。随分昔の事の様に感じる。
あなたは敢えて沈黙を保っていた。忘れもしなかった。あの出来事である。あの出来事が人生全てを狂わせた。
あの飄々とした性格がビビりな性格になり、高かった身長がこじんまりと纏まってしまった。
お陰で周りから舐められる羽目だ。
─────(場所を変え)
────(一時間前)
亜子は含み笑いを浮かべながら目の前に浮遊式のパネルを起動させる。
そのパネルと睨めっこしながら眉を潜めた。
貞斗はそれだけはっきりと答えると無線の電源を入れる。
紅羽は暫く瞑目してから肯首した。
貞斗の隣にいた芽依が口角を上げた。そして肩を2回叩いてから改めて向き直った。
────
紅羽は眼前のミルヴァ軍に向かってニコニコと笑い始めた。
風が不気味に吹き抜ける。少女の髪を揺らす。
然し…寸前に迫ったのは紅蓮のゴルフボール大の球。
紅い球からはじゅうじゅうと溶岩が噴き出ている。ぽたぽたと零れ落ちて土と草が黒く焼け焦げている。
オトコ達は目に大きな穴を開けることになった。
紅羽は周りの惨劇に改めて目を向けた。血塗ろの兵士。Soul Reaperの親分は片付けた筈なのに未だに増える…という事は。
そしてその紅羽と背中を合わせて呪文を唱えるのは…
兵士から青紫の塊が出てくる。ひゅるひゅるとオーラが付き纏っている。
白く長細い指先が薄紅の唇へと当たり、呪文を詠唱すると身体全体が薄黄色に発光する。
周りに発光した鮮やかな精霊達が集まる。
精霊達の祝福は凄まじい───久しぶりの『客人』なのだから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。