第33話

異変
24
2018/03/05 10:31
あなた

───ッ…!

聞かれるのは…分かっていた。
何故か。何故だろうか。随分昔の事の様に感じる。
貞斗
貞斗
────今まで──紅羽と俺、おめェで3人でバケモノ扱いされてた。それ程、実力も伴ッてたんだよ。
貞斗
貞斗
──なのにあなた…テメェは急に第一支部を抜けた。…何かあったのか?
あなた

…。

あなたは敢えて沈黙を保っていた。忘れもしなかった。あの出来事である。あの出来事が人生全てを狂わせた。
あの飄々とした性格がビビりな性格になり、高かった身長がこじんまりと纏まってしまった。
お陰で周りから舐められる羽目だ。
あなた

……。実は───

貞斗
貞斗
────
─────(場所を変え)
ミルヴァ軍1
うおおおおぉぉおお突っ込めェエエ!
ミルヴァ軍2
今『バケモノ』は一人だけ!もう一人がどっか行ってる間に殺れェェ!!!
紅羽
紅羽
…。
────(一時間前)
亜子
亜子
今第二支部が押されてる。『バケモノ』も居るのは居るけど…。
貞斗
貞斗
『バケモノ』って…あなたの事か!?
亜子
亜子
そうそぅ★
亜子
亜子
で、どっちかに救援に行って欲しいの。
亜子は含み笑いを浮かべながら目の前に浮遊式のパネルを起動させる。
そのパネルと睨めっこしながら眉を潜めた。
紅羽
紅羽
…どう───
貞斗
貞斗
────俺が行く。
貞斗はそれだけはっきりと答えると無線の電源を入れる。
紅羽は暫く瞑目してから肯首した。
貞斗
貞斗
良いよな?
亜子
亜子
ん、大丈夫。
芽依
芽依
ヘマぁ───見せちゃ駄目だよぉ?
貞斗の隣にいた芽依が口角を上げた。そして肩を2回叩いてから改めて向き直った。
紅羽
紅羽
気を付けて。
貞斗
貞斗
おぅ。多分大丈夫だと思うが。
梨華
梨華
頑張れぇ───。
────
紅羽
紅羽
若しかして──
紅羽
紅羽
『一人だから倒せる』って、思いましたか?
紅羽は眼前のミルヴァ軍に向かってニコニコと笑い始めた。
風が不気味に吹き抜ける。少女の髪を揺らす。
ミルヴァ軍1
なぁぅ…何だと…!
ミルヴァ軍2
ビビるな!大丈夫だろ?!
然し…寸前に迫ったのは紅蓮のゴルフボール大の球。
紅い球からはじゅうじゅうと溶岩が噴き出ている。ぽたぽたと零れ落ちて土と草が黒く焼け焦げている。
紅羽
紅羽
───flair
オトコ達は目に大きな穴を開けることになった。
紅羽は周りの惨劇に改めて目を向けた。血塗ろの兵士。Soul Reaperの親分は片付けた筈なのに未だに増える…という事は。
紅羽
紅羽
未だ居るみたいですね…。死んだ魂を働かせてる────KINGが。
そしてその紅羽と背中を合わせて呪文を唱えるのは…
梨華
梨華
soul spirit───
芽依
芽依
『鎮魂歌』…!
兵士から青紫の塊が出てくる。ひゅるひゅるとオーラが付き纏っている。
白く長細い指先が薄紅の唇へと当たり、呪文を詠唱すると身体全体が薄黄色に発光する。
周りに発光した鮮やかな精霊達が集まる。
梨華
梨華
合技 spiral requiem───!
精霊達の祝福は凄まじい───久しぶりの『客人』なのだから。

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