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第1話

ひと夏の恋。
492
2017/10/03 14:56
野球部一同
ファイッオー!
日差しが眩しいグラウンドを野球部が今日も汗を流しながら走っている。
森 敦士(もり あつし)
もっと声出せ!ファイッオー!!
野球部一同
はい!!
久保 美希(くぼ みき)
暑そう……
私はそう呟きながら先頭にいる敦士を眺めていた。
久保 美希(くぼ みき)
あ、ぼーっとしてちゃ駄目だ
皆のスポドリとタオル用意しなきゃ。
私はボトルにスポーツドリンクを入れ、
全員分のタオルを持ち皆のとこに駆け寄っていった。
久保 美希(くぼ みき)
皆お疲れ様ー!
はい、これスポドリと、タオル。
ちゃんと水分補給してねー
野球部一同
いやー、ほんとまじ美希さんがマネージャーで良かったっすよ、、気は利くし可愛いし、、、、
野球部一同
お前口説いてんじゃねえよwww
野球部一同
ばっか!口説いてねえよ!w
久保 美希(くぼ みき)
はい、敦士
私は敦士のとこに行きスポドリを渡した。
森 敦士(もり あつし)
おー、いつもサンキュ!
久保 美希(くぼ みき)
いいってことよ~
もう気付いている人もいるかもしれないが、
私は敦士が好きだ。
頑張って野球をしている敦士が好きだということを、
マネージャーをしている内に段々自分の気持ちに気付いた。
久保 美希(くぼ みき)
今日も頑張ってんね~
森 敦士(もり あつし)
まあな。試合近いし
久保 美希(くぼ みき)
試合頑張れよ!
私も応援行くから
森 敦士(もり あつし)
お前が来ても勝てる気しねえーwww
久保 美希(くぼ みき)
はあ!?じゃあ行かんわ!
森 敦士(もり あつし)
嘘うそw
お前がいたら勝てる気するわ。
そう言うと敦士は練習に戻っていった。
久保 美希(くぼ みき)
なによそれ……
そう呟くと私はその場にしゃがみこんでしまった。
嬉しい。
もしかしたら敦士も私のこと好きなんじゃ……
とか思ったりした。
付き合えたら、いいな。
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次の日の朝、私は少しでも振り向いてもらいたくて
スカートをちょっと短くしてみたり、
前髪をピンでとめたりしてみた。

敦士、気付くかな……
と小っ恥ずかしい事を考えながら家を出ると、
家の前で敦士が立って待っていた。
久保 美希(くぼ みき)
ごめんごめーん!支度遅れた
森 敦士(もり あつし)
おっせーよw
早く行こーぜ
野球部一同
ヒューヒュー
あの二人付き合ったらいいのになー!
野球部一同
そうだよなあー、、お似合いだもんな!
森 敦士(もり あつし)
あいつら……
久保 美希(くぼ みき)
…私達付き合ってるように見えるんやね
森 敦士(もり あつし)
ほんと困るよなーw
久保 美希(くぼ みき)
私はそんなに困らないけど……
そう小声で呟くと
ハッとして恥ずかしくなった。
森 敦士(もり あつし)
ん?なんか言ったか?
久保 美希(くぼ みき)
な、なんも!
森 敦士(もり あつし)
あ、お前に紹介したい奴いるんだけど、そこのカフェで待ち合わせしてるから寄っていいか?
久保 美希(くぼ みき)
あ、うん。いいよ
(誰なんだろ……)
少しモヤモヤしながらカフェに入ると
不意に甲高い声が聞こえた。
坂井 美優紀(さかい みゆき)
敦士くーん!こっちこっち!
森 敦士(もり あつし)
お、もう居たのか!はえーなw
久保 美希(くぼ みき)
(あの子誰なんだろう……)
坂井 美優紀(さかい みゆき)
美希さんに早く会いたくって!!
森 敦士(もり あつし)
俺じゃねえのかよ!
2人は私が居ないのかのように楽しげに話していた。
敦士は私には見せたことない笑顔で笑っている。

あの子は敦士のなに……?
森 敦士(もり あつし)
あ、こいつ美優紀。
昨日から俺達付き合い始めたんだ。
坂井 美優紀(さかい みゆき)
美希さんのお話は良く聞いてます!
仲良くしてくださいっ
美優紀、という可愛らしい女の子はぺこっと頭を下げてにこっと笑った。
久保 美希(くぼ みき)
あ……そうなんだ。
水臭いなあ、もっと早く言ってよね!、
森 敦士(もり あつし)
ごめんごめんw
びっくりさせたくてさ!
ほら、お前心配してただろ?
俺に彼女出来ないから
久保 美希(くぼ みき)
あはは、良かったじゃん!
可愛い彼女出来て、、
坂井 美優紀(さかい みゆき)
可愛いだなんて、そんな、、!
美優紀ちゃんは赤面し目の前で手を交差させてあたふたしていた。
私とは違い、ふわふわしていて女の子らしい子だった。


ああ、敦士はこういう子が好きなんだ。

そう思うと自分がしたことが急に恥ずかしくなって俯いてスカートをぎゅっと握った。

スカート短くしたり
ピンとめたりして、、馬鹿みたい。

敦士が私のこと好きかもとか
私調子乗りすぎ……
久保 美希(くぼ みき)
じゃあ、私はそろそろ行くわ!
森 敦士(もり あつし)
え?お前も一緒に学校行かねえの?
久保 美希(くぼ みき)
邪魔者は退散しますよーっと!
坂井 美優紀(さかい みゆき)
ええっ、もっと話したかったなあ、、
美優紀ちゃん、可愛いな。
久保 美希(くぼ みき)
てことでまたな!
森 敦士(もり あつし)
お、おう、、
気付いたら私はカフェを飛び出して走っていた。

ピン止めを外し、泣きそうになるのを
ぐっと堪えた。
久保 美希(くぼ みき)
私じゃ、無かった……っ
ああ、駄目だ。
涙が溢れてしまう。
久保 美希(くぼ みき)
美優紀ちゃんより私の方がずっと一緒にいたのに…ずるいよ……
ずるいのは私だ。
勇気を出して告白したりアピールをしていれば
敦士の隣は私だったかもしれない。
美優紀ちゃんはきっと凄い努力をしたんだと思う
そんな美優紀ちゃんの事をずるいなんて思ってしまう私は最低だ。
私は校舎裏に行き、
1人でひたすら泣いていた。
私に、勇気があれば……
そればかり考えていた。

ひたすら泣いて、
私は決断した。
久保 美希(くぼ みき)
あの2人を、応援しよう。
そう決めた。
だけど少しでも気が緩んでしまうと涙が溢れそうになる。
久保 美希(くぼ みき)
明日からはいつものように元気な私で接しよう。
久保 美希(くぼ みき)
でも……
今日だけは、泣いてもいいよね…?
自分にそう問いかけ、
またひたすら泣いた。

失恋がこんなに辛いなんて。

そう思い、ぐっと涙を堪え空を見ると
虹がかかっていた。
まるで私を元気づけるかのように。

まるで、虹が「泣かないで。次があるよ。」
そう言ってくれている気がした。
久保 美希(くぼ みき)
……よし、教室戻ろ。
私は失恋という壁を乗り越え
新しい1歩を踏み出したのだ。










_______________END

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