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その日の夜、約束通り未来が私に武先輩のIDを送ってきた。
取り敢えず追加してみよう。
先輩に毎日こんな風に未来のいい所を言っている内に私は先輩の事が気になり始めてしまった。
先輩と未来が付き合ってしまったら。
私はそればかり考えてしまう
でも未来と約束したんだから自分の気持ちは抑えよう
そう思ってた。
武先輩が気になり始めて5日くらい
経ったとき、
ついに私は武先輩が好きになってしまった。
思いを伝える気はない。
伝えれない。
___________だって未来の好きな人だから
自分の気持ちを隠し通して一週間経った頃
未来が放課後に私のとこへ来た。
告白する。そう聞いたら
私の胸は〝ズキッ〟とした。
棘が私の胸を締め付ける。
でもこれで良いんだよ。
未来が武先輩と付き合えれば、
それで良い。
武先輩に未来のいい所を沢山言ってきたから
イメージは好印象だろう。
私は、
そう言った。
私の初恋は終わった。
家に帰ると
真っ直ぐに自分の部屋に行った。
スマホを開くと
武先輩とのトークがあった
それを見たらまた〝ズキッ〟とした
その日は顔をくしゃくしゃにして
泣いて泣いて泣きまくった。
明日にならないで欲しい
私はそう願った。
明日もし武先輩と未来が一緒にいる所なんて見たら
また泣いてしまう。
私はそう思いながら眠りについた
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次の日の朝
私は憂鬱な気持ちで教室へと足を進めた
ガララッとドアを開けると
未来の姿があった。
未来は私を見つけると駆け寄ってきてこう言った。
私はえ?っと思った。
未来とは付き合っていない
そう聞くと少しホッとした。
でも、先輩には好きな人がいた。
その真実がまた私の胸を刺した。
〝ズキッ、ズキ〟と胸が痛い
先輩の好きな人は
優しい子。
私じゃない事が確信した。
だって私はずるいから。
未来の好きな人を好きになってしまった私は最低だ。
決していい子じゃない。
未来に協力出来ないって言っていたら少しは違ったんだろうか。
私も先輩に告白出来ただろうか。
そんな事を考えていたら気づいたら教室に誰も居なくなっていた。
私は急いで荷物を片付け教室を出た。
下駄箱に入れてた靴に履き替えて帰ろうとしたとき
誰かに名前を呼ばれた。
気のせいだと思ってそのまま帰ろうとすると
今度ははっきり名前を呼ばれたのが聞こえた。
くるっと振り返ってみるとそこには
武先輩がいた。
私は未来の事を聞かれると思った。
私の事が好きと言われ
私の胸は高まった。
〝嬉しい〟
〝私も好き〟
咄嗟に出ようとした言葉を
私は抑えた。
本当は付き合いたい
でも未来の気持ちを考えたら
付き合うことなんて出来なかった。
先輩は俯いて泣きそうな顔をしていた。
先輩に触れようとした手を私は引っ込めた。
私はこの場をどうしたらいいか分からなかった。
私は先輩を一人残して逃げ出した。
冷たい空気が頬を撫でる。
私は息を切らしながら家へ帰った。
先輩ごめんなさい。
あんな顔させるつもりじゃなかったんです
ただああ言うしか無くて……
そうメールを送ろうとして
私の指はピタッと止まった。
お互い好きなのに
誰が付き合ったらいけないって決めたの?
……私だ。
怖くて逃げてただけだ。
好きな人にあんな顔させて傷つけて。
私は何をしてるんだろう。
そう思うと
涙がポロポロ溢れ出した。
私は手の甲でゴシゴシ目を擦ると
「先輩今から〇〇公園に来れませんか?
私ずっと待ってます」
とメールを送った。
私は先輩からもう逃げない。
そう決心すると
急いでコートを羽織り
公園に向かった。
私は公園のベンチに座って待っていた
すると何かが頬を冷たいものが伝う。
空を見てみると
雪が降ってきていた。
天気予報では雪が降るなんて言っていなかったのに……と思っていると
走ってくる足音が聞こえた。
私は先輩に見つめられ
パッと目を逸らしたが、すぐに先輩の方を見た。
まず言わなきゃいけない事がある。
先輩が好きで
一緒にいたいってこと。
私は寒空の下
勇気を振り絞って言った。
〝付き合って下さい〟
そう言おうとした瞬間先輩に抱きしめられた。
突然の事にパニックになってしまい、
あたふたしていると
先輩が深いため息をついた。
ああ、また泣きそう。
そう思っていたら先輩が急に笑い出した。
私は先輩の言葉を遮ってこう言った。
私は今にも泣きそうな目でじっと先輩を見つめた
先輩はため息をつきながら私を強く抱きしめた。
先輩は急に立ち上がってそう言った。
もっと一緒にいたかったな……
なんて思っていたら
先輩が手を差し伸べて
先輩は耳を真っ赤にしながら
私の手をとった。
私達は手を繋いだまま暫く笑っていた。
勇気を出せて良かった。
そう思える
私は心の中で呟いた。
これからもずっと好きです、
先輩のこと__________。
END
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。