「起立、礼」
委員長の号令がかかって、3年生になって1回めの数学の授業が始まった。
「はい、お願いします。まぁ、1回めの授業だから、まずはとりあえず先生の自己紹介な。ほとんどの人が分かってると思うけど」
「はいっ、私知ってまーす!名前は甲斐優翔先生で、教科が数学で、25歳!」
「はい、その通りです。っていうか何でお前が言うんだよ」
先生の自己紹介を勝手に始めて勝手に終わらせた女の子は宮野真央(みやのまお)。とにかく明るくて、うるさくて、彼氏も居て、クラスの中心的存在。私はあんまり得意なタイプじゃない。
「ていうかさ、先生担任だから自己紹介とかいらなくね?」
これは長池流真(ながいけりゅうしん)が言った。真央とも仲がよくて目立つタイプ。
「それな!普通に学活の時間に自己紹介したじゃん」
真央がそう言うと、
「今は数学の時間だから、全員一人ずつ数学の目標を言ってもらおうかな」
と、甲斐先生が言った。この言葉を聞いて全員「えー」というため息をもらした。
「じゃあ、5分間時間やるから考えろー」
___5分後___
「じゃあ出席番号順に立って発表していけー。池田からー」
「はい。僕は数学が得意なので、さらに伸ばしていけるように授業に集中していきます。」
「うん、素晴らしい。じゃあ次ー」
___________
「はい。森も一緒に頑張ろうな。次、柳瀬ー」
「はい。私は、授業中、寝ないようにして、しっかり授業を受けて、成績を上げていきたいです。」
「うん、受験生だから大切なことだな。授業中寝ないって言ったからな?約束だぞ?」
「はい。」
「ははっ、素直でよろしい」
この約束をしたのが私。柳瀬花音(やなせかのん)。この約束から私と甲斐先生の恋もどきが始まる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。