我に返った私達は、とりあえず向き合って座った。
「えーと、先生?今のって…?」
顔を真っ赤にした先生は
「そう、だな…。うん、まあ、そのまんまの意味だよ、うん。俺は、花音が…好きなんだ」
しどろもどろになりながら、また、好きと言ってくれたことにドキドキしている私がいる。
「いや、花音もさ、言ったじゃん…?」
「はい…私も、先生のこと、好き、です…」
お互いに顔を真っ赤にしながら照れる。
「じゃあさ、花音?その、じゃあ、つ、付き合ってください…?」
「…は、はい。こちらこそ…」
互いに顔を見あわせて「えへへ」と笑う。ああ、本当に幸せ。
「あ、でも、一応このことは…ね?」
「はい、勿論、ひみつですね?」
「うん、本当ならさ、そんなことしたくないけど…」
「ううん。私は、先生に迷惑かけたくないです。だから、いいんです」
「花音、ありがとう」
先生の笑顔。見ているだけで幸せになれる笑顔。これからもずっと見ていたい。
「っていうか、悪いな。俺が引き止めたから、もう下校時間だな」
気付いたらもう7時になろうとしていた。
「あ、じゃあ、失礼します」
「おう」
私が相談室を出ようとすると、後ろから抱きしめられた。
「花音、気をつけて帰れよ。また、明日な」
先生の声にドキドキして顔がまた熱くなった。
「さよ、なら…」
小さくなった声でそう言って、相談室を出た。
帰り道、今日を振り返っていた。
今日1日で、色んなことがあったな。甲斐先生にうちのこと話して、先生のこと好き、って気づいたら、先生に好きって言われて、付き合うことになった。
こんなに幸せなことあってもいいんだろうか。そんな事を考えながら帰っていた。そんな時にふと、大樹からLINEがくることを思い出した。急いで帰ろ、軽い足取りで家に帰った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。