学校につくと、大樹はもう来ていて私と目が合ったんだけど、すぐに逸らされた。でも、昨日決めたから、
「大樹!おはよう!」
朝はテンションが低い私だけど、ちゃんと大樹に聞こえるように挨拶をした。私の挨拶に驚いた様子の大樹は、私の方を見て
「ぉ、おはよ、ぅ」
と言ってくれた。でも、すぐにどこかへ行ってしまって、朝は挨拶だけで終わってしまった。だから、休み時間に
「昼休み、話あるから、待ってて」
と言ったら、声は出さなかったけど、こっちをちらっと見て頷いてくれた。
__________________
昼休み。大樹はちゃんと待ってくれていた。
「私の何がそんなにイライラするの」
大樹は何も言わずただ、下を向くだけだった。
「何で、何も言わないの。そんなに私のこと嫌いなら、何で仲良くして欲しいとか、言ったの」
「………………」
「ねえ、何か言ってよ。嫌いなら嫌いでもいいからさ」
「違う……」
小さな声で大樹が口を開いた。
「え?」
「別に、嫌いじゃない」
「じゃあ、何でなの」
「……花音が…羨ましかった…から」
「羨ましい…って、何が」
少し間を置いて絞り出す様に答えた。
「誰にでも…好かれるとこが……」
意外な答えだった。私自身、誰にでも好かれているなんて思ったことがなかったから。
「そんなこと、ないでしょ」
困ってしまってこんな言葉しか出てこなかった。
「そうじゃないんだよ……」
そう言うと大樹は目に涙を浮かべた。幸い、今日は晴れていて、教室には誰も残っていなかった。
「大樹……?」
声をかけると、苦しそうな顔をしていた。そんな顔、大樹には似合わないし、して欲しくないから
「なんかあるなら、話してよ……!私でいいんだったらなんでも聞くからさ……!」
そう伝えた。大樹はこっちを見て、
「俺の話、聞いたら、ドン引きするぜ……」
伏し目がちに言った。
「しない!絶対しないから!だから…!」
言葉にならなかった。大樹は、私を見て
「絶対、って言ったからな」
泣き笑い、まさにそんな顔で言った。
ここから、大樹の話。
これがきっかけで大樹は、私の大切な大切な友達の一人になる。
大樹の、恋もどきの話。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。