いつからこんな風になったのかは分からない。でも、気付いたら俺が好きなのは『男』だった。
小さい頃はそんなことは無かったはず。だって幼稚園の時は、ユミちゃんっていう女の子が好きだったんだから。
『男が好き』そのことに気づいたのは小学5年生くらいだった。この頃になると少しずつ、誰が誰のことを好きみたいなのが出てきて、俺も例外じゃなかった。
5年生の夏休み。クラスのレクリエーションで、キャンプをした。寝る時は、5、6人に分かれて、テントで寝た。俺はその当時、川崎陸(かわさきりく)って奴と仲が良かった。だから、寝る時も俺と陸といつも一緒にいるメンバーで寝たんだ。
普段とは違う環境で、すぐに寝れるはずもなくて、俺らはヒソヒソと話してた。何がそうさせるのかは分からないけど、ドキドキしてるからなのか、自然と好きな人の話になった。
当時の俺は、同級生の女子に、可愛いなんて、思ったこともなくて、ただただ、うるせえな位にしか思ったことがなかった。でも、他のやつの話を聞いてると、誰が好きとか、誰が可愛いとか、意外とそういうこと考えてるんだなって思ってた。
でも、陸は違った。クラス全員、いや、学年全員が知っていたと思う。陸はモテた。顔がそこそこ良くて、小学校のサッカークラブに入っていて、上手かった。俺も同じチームだったから、仲良くなって、いつも一緒にいるようになった。バレンタインなんかは大量のチョコを貰って毎年困っていた。
そんな陸は、どんだけ告白されても「ごめんなさい」と断っていた。何で断るのか、聞いたことがなかった俺たちはその時に聞いてみた。そうしたら陸は、
「好きな子がいるから」
と嫌々ながら答えてくれた。意外だった。モテてはいたけど、そういう話はしたことが無かったから。それを聞いて、誰なんだよ〜って聞いたんだけど、それ以上は教えてくれなかった。
そんな話をしながら何時間か経った頃、誰かが、眠いと言って全員眠りについた。
だけど、俺は眠れなかった。陸の好きなやつが気になってしょうがなかったからだ。陸は本当にモテる。いつかは誰かと付き合うだろう。わかっている事なのに、気分が悪かった。なんでこんな気持ちになるんだろうって考えている間に気付いたら寝てしまっていた。
次の日の朝も、陸の好きなやつの事をずっと考えていた。誰が好きなんだろう、って。それしか頭になかった。
キャンプが終わってからも、モヤモヤしたままで、どうしたらいいものかと、パソコンで調べた。
『自分の友達の好きな人が気になってしょうがない 何で?』
その答えは予想外のものだった。
『それは、"恋"ですよ』
信じられなかった。俺が?リクに?恋?そんな訳がない。だって俺は男で、陸も男。男が男に恋をするなんてありえないだろ。
そう思いたかった。だけど、実際は違った。
『恋』この言葉を見て、納得してしまった。
『俺は、陸が好き』そう考えると、モヤモヤがスっと消えていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。