俺と陸のあいだに起こった事件。話してしまえば、それだけで作品ができてしまいそうなくらい長くなるから簡単にまとめると、
『友達がホモかよー(笑)って冗談で言ってきたから、ちげーしって返したら、陸がそれを間に受けてそこから未だに仲直りが出来てません』
これが答え。そこから今日に至るまで、会話はおろか、目すら合わせていない。同じ中学で、同じサッカー部なんだけど、本当に一回もない。
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大樹は、誰もいない教室で私に全部を打ち明けてくれた。陸くんのことは知っていた。あんまり話したことはないんだけど、イケメンでかなりモテるという話を舞子から聞いたことがある。
「俺は、つまり、……ゲイなんだよ……」
意識しないと聞こえなくなるくらい小さな声。
「陸のこと、忘れたいのに、同じ部活だし……だから、部活のことも忘れたくて、勉強して気を紛らわそうと思ってたら、勝手に成績が良くなって……」
「それは、…微妙だね」
「花音はさ、忘れてるかもしれないけど、道徳の授業でさ、もし友達がゲイだったら?って聞かれた時、嬉しいって言ったろ?」
「ああ、うん、確か…」
「言いづらいことを話してくれて嬉しい、って言ってたの聞いて、良い奴なんだなって思ったんだ…」
そんな事で?って思ったけど、言わなかった。大樹にとっては、大きなことだったんだと思う。
「でも、なんか少し、スッキリしたわ」
「良かった。じゃあ、これからは無視とかしないでよね」
「おう!」
少し元気を取り戻せたみたいで良かった。
「あ!このことは秘密だからな!」
「うん」
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……………………。このあとも、もうちょっとラブラブしてました。はい。
何はともあれ!大樹と仲直りできて、本当に良かった!
これからは私も大樹も恋もどくのかも……?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!