第30話

舞子のテスト。
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2017/11/04 05:00
「やっばいよ!やっばいよ!」

狂った様に飛び跳ねながら舞子が近づいてきた。

「ん?遂に狂ったね。どした?」
「テスト!」
「いつもやばいじゃん」
「そーなんだけど!」
「認めるのね」
「あのね、先生から!これ以上成績が下がっていったら!補習だって!」
「え、逆に今まではなかったんだ」

舞子は私の声が届いていないようで、急に動きを止めたかと思ったら、

「勉強!教えてちょんまげ!」

と私と大樹の手を取って頼んできた。

「え?俺も?」

大樹が嫌そうな顔をした。

「可哀想な友達のことを助けてよぉー」

必死で懇願する舞子に

「わかったよ。でも、部活もあるからあんま教えられないと思うけど」

舞子にはたくさんの事で助けてもらってきたから、私の答えは最初から決まっていた。

「しゃーねーなー、学年トップの大樹様がおしえてやるよ」

大樹も協力してくれることになった。

「ありがとぉー!!心の友よ!」

舞子が飛び跳ねながら喜んだ。それを前から見ていた甲斐先生が私たちに近づいてきて、

「花音、大樹、佐藤に教えてやってくれ。特に数学。」

舞子の頭に手を置いて先生が言った。

「いいか、佐藤。授業中起きていれば点数が取れるのに、いつも寝てるから取れないんだからな」
「うぅ、はいぃ」

舞子は本気で反省したのか、下を向いて答えていた。

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テストの結果で凹んでいた舞子も、部活になると何も無かったかのように元気を取り戻していた。

「舞子、調子いい!」

愛美が声をかけると、

「あたぼーよ!勉強がダメなら運動頑張る!うちのマザーが言ってた!」

舞子が普段から切り替えが早いのは、お母さんのおかげなのか。

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「頑張ったー!」

部活が終わって、自分で自分を褒める舞子と一緒に帰っていたら、

「甲斐先生はっけーん!」

遠くで男子と話している甲斐先生を見つけた。

「せんせーい!部活頑張ったー!」
「うん、いいことだけど、佐藤は勉強も頑張ろうなー」
「うひょう!」

舞子はテストのことを忘れていたようで、本気で驚いていた。

「花音、佐藤をよろしくな」
「花音、私をよろしくねー」
「はーい、よろしくされまーす」

楽しそうな舞子に手を振って、家に帰ろうとした。

「花音、今日はチャリ?」

甲斐先生に止められた。

「はい」
「明日からさ、歩いてこいよ」
「え、何でですか?」
「うーん……」

言いづらそうに口ごもったあと、周りを見渡すと、私の耳元に顔を近づけた。

「一緒に帰りたい」

言い終わって顔を離すと

「そういうことだから。まあ、今日は無理だけどさ。明日から。な?」

目をそらしたまま私は頷くことしか出来なかった。

「じゃ、また、明日」
「さようなら……」


家に帰っているあいだも、お風呂に入っても、ご飯を食べてても、顔の火照りが消えなかった。

だって、あんなに顔が近くに来て……!


布団に入って目をつぶると、思い出してしまってなかなか眠れなかった。

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