夏休みになって数日がたった。毎日毎日朝から夕方までの部活は大変だったけど、今日の県大会の為に頑張ってきた。
「絶対勝つぞー!!」
「オー!!」
団体戦が始まる前に、部員全員で円陣を組んだ。掛け声はもちろん愛美。皆緊張とワクワクが止まらないのが表情でわかる。団体戦のメンバーに入れるのは8人。その中で試合に出れるのは、普通は6人。ありがたい事に私も団体メンバーで、試合にも出させてもらえる。試合に出れないメンバーの分も戦い抜く。その為に今まで頑張ってきたんだから。
「ナイス!!」
「いけるよ!!」
「おしい、おしい!!」
応援の声が頭に響いていた。
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団体戦で県大会の次に進めるのはベスト4まで。個人戦はベスト8。団体ではベスト4をかけた試合で、個人戦では愛美たちが2回戦。私たちが3回戦。舞子たちはベスト8をかけた試合で負けてしまい、県大会の次に駒を進めることは出来なかった。すごく悔しくて、メンバーはもちろん、部員全員が悔しさを抑えきれずに泣いていた。
「お前ら。今日までよく頑張った。特に3年。俺の指導に文句はあっただろう。それでもよく着いてきた。お疲れ」
この日ばかりは中山も声を荒らげることは無かった。
「明日からさ、もう部活ないんだよね」
今日が最後。それがなかなか実感出来なくて、愛美と舞子、穂花、私の4人でテニスコートを見ていた時に、誰かがポツリと言った。
「うちら最初さ8人だったよね」
1年生の時は同じ学年に8人居た。だけど、1年生の時に2人。2年生の時に2人。部活をやめてしまって、気づいたら、4人になっていた。
「今だから言うけどさ、ほのも部活やめると思ってた」
愛美が少し笑いながら言った。
「えー?なんでよー?」
「だって、ほのってさ、いつもフワフワしてる感じで、厳しい練習にはついていけないんじゃないかなーって思ってたから」
愛美の言葉を聞いて、穂花は困ったような笑顔を見せて恥ずかしそうに言った。
「うーん、確かに辞めたいなーって思ったことはあったけど、私、ソフトテニスが好きだからさ」
その言葉を聞いて舞子が手を叩いた。
「そう!そうなんだよ!私も!ソフトテニスが好き!」
そんな舞子を見て、3人とも「今さらー?」と笑いながらハモった。
それから少し、誰も何も言わない沈黙が続いた。その沈黙を破ったのは後輩の声だった。
「せんぱーい!お母さん達が、集合写真取るから来てくださーい!」
「わかったー!」
愛美が代表して答えた。
「じゃあ、行こっか」
「そだね」
「ねぇ、うちらさ、サイコーだったよね」
「うん」
「青春だったよ」
「次は受験が待ってるよ」
「今はやめてよ」
「今から恥ずかしいこと言うけど忘れてね」
「なにそれ」
「何言うの」
「告白かな」
「みんなに会えてほんとに良かった。ありがとう」
「うわっはずっ」
「こっちまで照れる」
「らしくないね」
私たちは仲良く4人でみんなの元へ向かった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。