第43話

プリクラ♡
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2017/11/24 08:50
ゲームセンターをウロウロしていると、

「ねぇ、あれしてみない?」

優翔が指さしたのはプリクラ機だった。

「プリクラ?」
「うん、実は撮ったことないから撮ってみたくて」

部活のメンバーやクラスの友達と来たことはあるけど、そんなにたくさん撮ったことがある訳じゃない。だから、たくさん並んでいるプリクラ機の中で、どれがいいとかどれがあんまり良くないとかは知らない。

とりあえず『色白美人』という言葉に釣られて一つのプリクラ機に入った。

ここでもお金は優翔が払ってくれた。お金を入れるとタッチパネルには、『友達or家族orカップル』という質問が表示された。カップルを選んぶと、『よーし!どんどん撮ってこー!』という声とともに撮影が始まった。

『2人でハートポーズ♡』
『むぅー♡』
『ラブラブー♡』

プリクラ機からは恥ずかしい言葉が流れ、モデルがお手本みたいな感じで画面に映る。もちろんそのポーズをする必要はないんだけど、他にどんなポーズをすればいいのか分からない私たちは、顔を真っ赤にしながら音声に従った。

『落書きブースに移動してね♡』

撮影が終わって、2人で落書きブースに移動した。今どきの子みたいに目を大きくして顔を小さくして、肌をツルツルにはせず、『初デート』とか、名前を書いたり、今日の日付を入れたりして終わった。

「いやー、めっちゃ恥ずかしかったな」

ゲームセンターを出ると、時間は16時だった。特にすることもなくなったので帰ることにして車に乗った。

「もう……やばい…」

プリクラを撮ってから時間が経っても、私の顔は真っ赤だった。

「花音、ちょー可愛いし」
「……なにが?」
「顔真っ赤で、すっごい恥ずかしくしてるのに、一生懸命俺にくっついてきてくれたとこ」
「……めっちゃ恥ずかったし……………」
「それと、俺がチューしたあとの反応も」
「!!!」

プリクラを撮っている時、『愛してるよ♡チューっ♡』という音声が流れた。画面には女の子のモデルから男の子のモデルにキスをしていた。だけど、私からそんなこと出来るはずもなく、顔を真っ赤にしていたら、『5、4、3、2、1』というカウントダウンの『1』の時、優翔からほっぺに触れるだけのやさしいキスをされた。

驚きと緊張と恥ずかしさと、少しの嬉しさで何も言えなかった。

「とりあえず、今日はいろんな花音が見れたから満足だな」
「…私も、いろんな優翔が見れて良かった」

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「あーぁ、もう着いちゃった」

明日からまた、部活が始まるらしい。3年生が引退しても、新チームの指導が始まるから先生に休みはない。

「じゃあ、頑張ってね」

車から降りて運転席の方に回った。

「うー!明日からまた大変だー!」

車の中で優翔が大きく伸びをした。

「花音ー、今日楽しかった?」
「うん。楽しかった」
「俺も」
「うん」

そのあと少し沈黙が流れた。それは、私が苦手な気まずい沈黙ではなくて、なんて言うんだろう。幸せを感じる沈黙だった。

「じゃあ、帰るわ」
「ばいばい」

車がゆっくりと発進して遠ざかっていった。




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