「舞子の好きな人って、石川くん?」
「え!なんでわかったん!」
「いや、俺だって見てればわかるよ」
石川航大(いしかわこうだい)くん。イケメンじゃないし、運動もそんなに出来るわけじゃないし、勉強もイマイチ。目立つほうでもなく、地味な方でもない。フツメン。男女とか目立つとか目立たないとか関係なしに、誰にでも話しかける舞子だけど、石川くんには特に話しかけている。
「えー、バレてんのかー」
「逆にバレてないと思ってたの?」
「めっちゃ隠してたのになー」
舞子がまたブランコを漕ぎだした。
「告白すんの?」
「いやー、出来ないよ」
「えー、嘘?」
舞子にしては珍しく消極的だった。思いたったらすぐ行動!みたいな舞子だから。
「じゃあ、大樹の好きな人教えてよ」
突然の言葉に大樹は驚いていた。
「いや、なんで俺なんだよ」
「大樹の好きな人ってー、陸じゃない?」
「え?」
私と大樹の疑問の声が重なった。なんで知ってるの?
「わたしさー、友達多いからさ、そんなに仲良くない人のLINEとかも持ってるんだけど、陸のLINEも持っててね、陸のアイコン?が、大樹の後ろ姿なんだよね」
舞子の話を聞いて、大樹は固まっていた。
「それでね、気になったから陸に聞いたの。なんでアイコン大樹なの?って。最初は全然教えてくんなかったんだけど、誰にも言わないって約束で教えてくれたの。アイコンが大樹の理由、なんだったと思う?」
大樹は下を向いていた。どんな表情なのかは分からないけど、混乱しているのかもしれない。大樹の答えは聞かずに舞子が続けた。
「大樹のことが好きなんだって。小学校の頃からずっと。でも、自分のせいで仲直り出来てないって。気にしてたよ」
「……なんとも思わねーのかよ」
大樹が下を見ながら言った。
「何をー?」
何も気にしていない様子で舞子が答えた。
「俺、男で、陸も、男、だぞ?」
途切れ途切れになりながら絞り出した言葉だった。そんな言葉に笑いながら舞子が言った。
「気にしないよ別に。今から名言を言っちゃうけどね、恋愛に壁はないんだよ」
「意味わかんねーよ」
軽々しく恥ずかしいことを言った舞子に大樹は苦笑していた。
そのあと大樹が、私に話してくれたことを舞子にも話した。舞子は、おぉーとか、ほぉとか、色んな反応をしていた。
「あ、じゃあさ、大樹も舞子も告ったら?」
私から提案した。
「いやいやいやいやいや!無理だって!」
「大丈夫!舞子なら出来る!大樹なんか、両想いって分かってんだから告んなきゃもったいないよ」
最初は二人とも拒否していたけど、3人で色々話していたら乗り気になったようで最終的には
「リア充なってやるー!待ってろ石川ー!」
と舞子が叫んでいた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。